カルチャー

2024.09.26 12:15

世界を唸らせた盆栽プロデュース「TRADMAN'S BONSAI」の守破離:小島鉄平

コンクリートの無機質な空間に盆栽が並ぶ TRADMAN'SBONSAIの活動拠点=ギャラリー(住所非公開)。国内外のVIPが購入に訪れたり、ブランドのクローズドイベントを開催したりしている。

コンクリートの無機質な空間に盆栽が並ぶ TRADMAN'SBONSAIの活動拠点=ギャラリー(住所非公開)。国内外のVIPが購入に訪れたり、ブランドのクローズドイベントを開催したりしている。

通常、盆栽の世界では5年間の住み込み修業が求められる。既存の枠にとらわれないTRADMAN’S BONSAIだが、小島は「オールドスクールがあってのニュースクール」という考えで、自身も“師匠”の元で修業を積んだ。見極めたうえで迎え入れる従業員にも弟子入りを課すが、かつては無給が当たり前だったその期間に、「今の時代それでは文化の担い手は育たない」と最低限の給与を出す。並行して、ギャラリーと呼ぶ活動拠点を年内にも拡張予定で、新しい人材を受け入れる環境も徐々に整えている。

TRADMAN’S BONSAIの事業は、週替わりで異なる盆栽を貸し出すリースと盆栽の販売で構成され、販売に関しては海外からのニーズも大きい。ありがたい話だが、懸念もある。

「人間は生きても100年というなか、盆栽は300年、500年と続きます。神社の御神木レベルの樹木を、目の前に楽しめる。さらにそこには過去の持ち主の創作や意図が残っていて、時を超えた対話ができる。でも、3日水をあげないだけで枯れてしまう」

その価値や希少性に惹かれてか、海外の富裕層は大金を出すが、手にわたったら最後、面倒を見られずに絶えてしまうものもあるという。彼らの資金力には抗えないなか「一定の樹齢以上のものは、海外に出さないという策も必要かもしれない」と小島。

現状TRADMAN’S BONSAIでは、内装や温度管理など“育てられる環境づくり”まで含めて販売するようにしている。ほかにも、京都の瓦職人や墓石の作家、江戸文字のアーティストなど、伝統文化を紡ぐ面々とコラボレーションし、面としての盆栽カルチャーの底上げに取り組んでいる。
東京・青山にオープンした松葉屋茶寮・方舟GALLERY。盆栽を代表する「松柏」のほか、紅葉や梅など季節に応じた「雑木」のある空間で、茶や菓子を楽しめる。

東京・青山にオープンした松葉屋茶寮・方舟GALLERY。盆栽を代表する「松柏」のほか、紅葉や梅など季節に応じた「雑木」のある空間で、茶や菓子を楽しめる。

TRADMAN’S BONSAIの立ち上げからおよそ10年が経ち、当初はぎこちなかった盆栽業界とも良好な関係を築けている。むしろ、人気が出てきた盆栽の世界に「新規参入が増えてますよ」と、小島が迎える側になった感もある。伝統の世界は、破壊や攻撃をもエネルギーにすると聞く。小島の存在によって、数百年続く盆栽文化の幹は確実に強くなっている。


小島鉄平◎1981年、千葉県生まれ。アパレルのバイヤーから盆栽業界に転身。2015年TRADMAN'SBONSAIを結成(2016年松葉屋を設立)。唯一無二の世界観で「盆栽」のある空間を演出し、国内外さまざまなブランドやアーティストと共演する。


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https://forbesjapan.com/feat/culture-preneurs30-2024/

文=青山 鼓 ポートレート=若原瑞昌 その他写真=TRADMAN’S BONSAI

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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