カルチャー

2024.09.26 12:15

世界を唸らせた盆栽プロデュース「TRADMAN'S BONSAI」の守破離:小島鉄平

03年には「江戸文字」をグラフィティアートとして表現するアーティストsneakerwolfとコラボした展覧会を実施。

03年には「江戸文字」をグラフィティアートとして表現するアーティストsneakerwolfとコラボした展覧会を実施。

「ちょっと気分を変えたくて道端に盆栽をもちだしたんです。そこに仲間がスピーカーをもってきて、いつものように音楽を流しながら盆栽をつくっていたら、いつのまにか人だかりができて。ライブペインティングのような雰囲気のなか、盆栽がどんどん売れたんです」

自分のバックグラウンドであるストリートカルチャーと盆栽の融合は、モノになる。そう確信した瞬間だった。日本に戻り、ファッション・デザインの展示会「rooms」に出展すると、ユナイテッドアローズやビームスなどセレクトショップとの仕事へつながった。

小島の独自性は、特に盆栽の“魅せ方”にある。明かりを落とした部屋に盆栽をおき、ライティングで際立たせる。必要に応じて飾り台も創作する。それは、日本の伝統的な盆栽のあり方とは一線を画す。

例えば、国内最高峰とされる国風盆栽展(通称、国風)。90年以上の歴史をもち、上野の東京都美術館で開催される同展だが、小島はかつて「世界の作家やコレクターが手を尽くした300鉢が並ぶんですが、壁や台など展示の仕方が全然ダメで。『盆栽にも出品者にも失礼じゃないですか』と言ってしまって」、師匠の怒りを買ったことがある。一方で、そのモダンな演出は、日本文化を好む海外エグゼクティブの心を掴み、近年はディオール、リモワ、ポルシェといった世界的なブランドからも引き合いが絶えない。
2022年、ポルシェと現代アーティストのダニエル・アーシャムがコラボレーションした車「Bonsai 356」の展示に、空間演出で参画。コラボを記念し、TRADMAN'S BONSAIのギャラリーでプライベートイベントも実施。

2022年、ポルシェと現代アーティストのダニエル・アーシャムがコラボレーションした車「Bonsai 356」の展示に、空間演出で参画。コラボを記念し、TRADMAN'S BONSAIのギャラリーでプライベートイベントも実施。

2023年には盆栽師・小島鉄平として京都の両足院で展覧会「TRADMAN’S BONSAI × LAND ROVER」を開催。伝統的な日本庭園を望む方丈や茶室を舞台に、盆栽によるアートイベントを開催した。同年12月には東京・南青山に「盆栽のある空間」を体験できるギャラリー併設のサロン・松葉屋茶寮を、翌4月には丸の内にフラッグシップストアをオープン。都市の一等地への出店は人気の表れであると同時に、新しい盆栽のあり方にコミットする小島の覚悟にも映る。
2024年春に東京・丸の内の仲通りに路面店をオープン。盆栽のほか、Tシャツやアパレルや盆栽フィギュアなどのオリジナルプロダクトも展開する。

2024年春に東京・丸の内の仲通りに路面店をオープン。盆栽のほか、Tシャツやアパレルや盆栽フィギュアなどのオリジナルプロダクトも展開する。

時代にあった文化の守り方を

盆栽が世界に通用するかっこいい文化であることを「特に日本の若い人に伝えたい」という小島の思いは、少しずつかない始めている。TRADMAN’S BONSAIで働きたいと弟子入りの志望者は100人が順番待ちする状態だ。
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文=青山 鼓 ポートレート=若原瑞昌 その他写真=TRADMAN’S BONSAI

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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