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サイエンス

2024.09.08 09:00

多種多様な感情の深みを味わう「心理的に豊か」な人生を実現する2つのヒント

2.「認知的に複雑」な人生を生きる

人格心理学の学術誌Journal of Research in Personalityに今年6月に掲載された論文によれば、心理的に豊かな人生に際立つ特徴は「認知的複雑性」だ。研究チームは、心理的な豊かさを経験している人は社会的情報の処理方法がより複雑だということを発見した。

• 帰属複雑性が高い

帰属複雑性とは、他者の行動を理解するにあたって複数の原因を探し、考慮する傾向を指す。たとえば渋滞中にほかの車に割り込まれたとき、すぐさま無礼なドライバーだとか無謀な運転だと非難する人もいるが、帰属複雑性が高い人は、緊急の用があって急いでいたか、ちょっと不注意だっただけだと考えるかもしれない。

• 全体論を実践する

全体論的な考え方をする人は、物事を大局的に見て、個々の経験をより大きな文脈でとらえる。たとえば親しい友人と口論になったとしても、すわ友情の終わりだと直情的になるのではなく、互いに理解し合い関係を深化させる長い旅路の途中で出くわす困難の1つだと認識する。

認知的複雑性の高い人生を送っている人は、曖昧さや矛盾を嫌がらない。人間関係、仕事、日常の出会いなどにおいて、人生の複雑さを受け入れている。自らの経験を深く振り返り、出来事の相互関係を認識し、人の行動が一面的でしかないことなどめったにないと理解している。

もつれた恋愛関係について、よい思い出や嫌な記憶を反芻するだけでなく、その両方がどのように自分の成長の糧となったかを考えたことがある人は、認知的複雑性の高いものの考え方をしているといえる。その恋人との関係を喜びや挑戦、学びの源と受け止め、なかなかうまくいかないことにすら感謝するかもしれない。

心理的に豊かな人生とは、痛みや困難を避けることと同義ではない。むしろ既存の信念を揺るがし、ポジティブな感情とネガティブな感情をともに含むような経験にこそ価値を見いだすことだ。

2022年の研究論文は、次のように記している。「死の床についたとき、幸せな人生を送った人は『楽しかった』と言うかもしれない。有意義な人生を送った人は『違いを生みだすことができた』と満足するかもしれない。心理的に豊かな人生を送った人は『なんという人生だったのだろう』と感慨にふけるかもしれない」

こうした経験の豊かさは、世界の多面的な美しさを見つめて、それに伴う課題や矛盾を受け入れる懐の深さから生まれる。だから、新しい経験や視点に対しては積極的になってみるべきなのだ。紆余曲折あってこそ、真に価値ある人生だといえよう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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