アート

2024.09.21 15:00

渋谷に現代アートのミュージアムを 実業家が見据える未来|今月のアートな数字

館内で最も広い地下1階の空間で、お気に入りのローレン・クイン作品の間に立つ植島。事業家・投資家に新たに「館長」の肩書が加わった。

ミュージアムは地下1階、地上6階を使い、現在約80点を展示している。「絵画における抽象」や「女性画家のまなざし」などのテーマで構成された空間もあれば、オラファー・エリアソンや塩田千春といった作家ごとの部屋も。“アフロ民藝”を提唱するシアスター・ゲイツの部屋に関しては、「春に来日していた本人が設営中に訪れ、展示に合わせた音楽や照明を考えてくれた」という。
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開館後、平日の人の入りは穏やかであるものの「フル回転させた最初の土曜日には400人を超える方々にご来場いただいた」と笑顔を見せる。来場者のSNS投稿に手応えを感じると同時に、コメントを参考に改善も加えている。
“物理好き”という共通点のある名和晃平の<PixCell – Sharpe’s grysbok>。「この作品には鹿のDNAが閉じ込められている。写真にはDNAを残せないけれど、彫刻では保存できる」

“物理好き”という共通点のある名和晃平の作品。「この作品には鹿のDNAが閉じ込められている。写真にはDNAを残せないけれど、彫刻では保存できる」

アートコレクターになる前と後で、いちばん大きな変化は何かと聞くと「思考の幅が広がったこと」だという。「それまで社会との接点は主に家族と仕事だったのが、直接ビジネスに関係ないことも含め、グローバルに多種多様なテーマに触れるようになった」。しかし、アートを通じて真理に迫るアーティストとの交流は、学生時代に物理学に没頭し、物事の本質を探究し続けてきた植島にとって自然なことだったのかもしれない。
 
ミュージアムという常設空間ができてから、ゲストを案内するたびに自分自身の理解も深まり、また「次はどんなテーマで展示をしよう」という視点で作品購入を考えることも増えた。今後は、教育機関との連携や、若手キュレーターへのキュレーション機会の提供も考えているという。新たなアートスポットの進化に注目したい。

文=鈴木奈央 写真=山田大輔 書=根本充康

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