アート

2024.06.22 13:00

レフィーク・アナドールが「没入型デジタルアート」で目指すAIの未来

Installation view of the exhibition "Refik Anadol: Unsupervised" |Photograph by Denis Doorly.(MOMA)

レフィーク・アナドールは、AIは前向きな変化を推し進めるものだと考えている。そして世界に対し、それを自らの作品によって証明しようと決意している。

AIを駆使したアート作品を生み出すパイオニアとして、アナドールがメディアに大きく取り上げられたのは、2023年。運営するロサンゼルスのスタジオがニューヨーク近代美術館(MoMA)で披露したインスタレーションが、「Unsupervised」が広く関心を集めた。

MoMAが所蔵する約14万点の作品から収集したデータを基に言語モデルを作成し、AIに学習させ、デジタルアートとして再構築したアナドールの作品はその後、MoMAが購入している。

アナドールを「分類」するのは難しい。アーティストであり、デザイナーである彼の作品は、ビジュアルアートとサイエンス、そしてテクノロジーの間を流れるように行き来する。それらの作品において、データは「絵具」の役割を果たしている。

賢明な指示を出せば、AIは最終的に私たちの生活を進歩させ、ウェルビーイングを向上させ、教育を支援し、より良い環境を作り出すことを助け、そして自然を再生させるための解決策を見つけることにも役立つのではないか──アナドールは、そう考えている。
Refik Anadol, Echoes of the Earth: Living Archive, 2024. Installation view, Serpentine North. Photo: Hugo Glendinning. Courtesy Refik Anadol Studio and Serpentine.

Refik Anadol, Echoes of the Earth: Living Archive, 2024. Installation view, Serpentine North. Photo: Hugo Glendinning. Courtesy Refik Anadol Studio and Serpentine.

そのアナドールにとって、AIの可能性の扉を開くカギとなったのは、彼が「最も公平で、純粋なデータソース」だと主張する「自然」だ。それを証明するように、2024年2月16日から4月7日まで、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーで開催された作品展、『Echoes of the Earth: Living Archive』に出品した作品は、自然環境の中で入手したデータに基づき、制作されている。

「生きたアート」であるそれらの作品は、絶えず新しい色と形、音を生み出し続けている(ブルガリの協力を得て制作した「熱帯雨林を思い起こさせる香り」も、作品に加えられている)。

ツールだけでは「創造」できない

アナドールの作品これまで、サイエンスフィクションが吹き込まれた現代芸術などといわれてきた。だが、それらは神秘的な尊さを備えているのと同時に、現実に深く根差したものであるように思える。

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編集=木内涼子

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