「ボタンを1つ押す、というだけのことではありません。すでにあるツールを使うこともできますが、それではアートになりません。私にとってそれは、プロセスの1つです」
また、自らの作品については、こうも語っている。
「問題があることも、限界があることもわかっています。手元にあるテクノロジーを、より良い世界を築くために使うことができますが、私たちはそのテクノロジーに自ら働きかけ、道を示さなければなりません。その協力関係は、対等なものです」
環境科学者や海洋生物学者、医師、哲学者、コンピュテーショナル・デザインを手掛ける設計者なども関わる「レフィク・アナドール・スタジオ(The Refik Andadol Studio)」でアナドールが進めるAIについての研究はますます、画像のダウンロードではなく、自然から直接入手した情報に頼るようになっている。
サーペンタイン・ギャラリーで披露した『Artificial Realities: Rainforest』の制作にあたっては、(同じアーティストの)妻と3カ月間、アマゾン川流域で暮らす先住民のヤワナワ族と生活をともにした。
「ツールを使用するだけでは、触感覚のある研究にはなりません。私は熱帯雨林に接し、ジャガーの声を聞き、ヘビと暮らし、鳥やあらゆる種類の昆虫、動物たちと生活し、自然のなかにいるということの意味を知ることができました。私たちが双方の物語を読み取り、理解すること。それが、私がAIの未来に希望することです」
アナドールは、AIを通じて自らが自然界に深く入り込むことが、私たちのアイデンティティの壁を破る「世界共通語」の発見につながると考えている。その探求するものは、この機械知能の時代に、人間であることの意味だ。
(forbes.com 原文)