アジア

2024.08.24 10:00

繰り返される中国経済の「挫折パターン」各経済指標が景気後退を示唆

民間による投資も縮小

一方、企業による支出も弱い。数字が入手可能な直近の期間である2023年には、民間企業による拡張と近代化のための設備投資はわずか1.9%増と、公共支出をはるかに下回り、中国が成長目標を達成するために必要な支出を確実に下回っている。経済全体の停滞と不透明さを考えれば、こうした消極的な姿勢は理解できるが、理由はそれだけではないだろう。

少し前までは、習近平国家主席は、中国共産党の方針ではなく利益を追求する民間企業の経営者を非難する姿勢をとっていた。しかし、政府も企業の事業拡大を望むようになった今、習近平は方針を転換し、企業経営者を「我々の同胞」として称賛し始めた。また、習近平の以前の発言は効果があったのだろう。企業経営者たちは、習近平が以前のような考え方に戻るのではないかと恐れているのだ。当局が民間企業の支出に大きな役割を与える計画を発表したことで、その懸念は最近さらに強まっている。言うまでもなく、民間企業はこれ以上のリスクを冒すことを躊躇している。

輸出も低迷している。他のアジア諸国の成長は全体の数字を押し上げたが、肝心の西側諸国と日本での売上は心強いものとは言い難い。米国、欧州、日本の各政府は、中国貿易に対してさまざまな敵意を示し、関税をかけたり、商品の移動を制限したりしている。この点では米国が最も強硬だ。また、政府だけでなく、西側諸国や日本の企業は中国に依存した以前の供給ルートをより分散させようと決意している。中国から米国、ヨーロッパそして日本への輸出は、すべての地域で前年と比べ減少している。

中国政府は昨年、ハイテク、特に電気自動車(EV)バッテリー、先端半導体、グリーンエネルギーへの政府投資プログラムを開始した。住宅購入、個人消費、民間企業への投資の不足を補うためである。しかし、その努力がもたらしたのは、対象とした分野で過剰生産能力を生み出し、中国経済を歪め、誰も中国での生産を求めていない分野の生産能力を増やしただけだった。この政府のプログラムも、解決策を生み出すことはなかったのだ。悲しいことに、このパターンはこれまでと同様、今後も繰り返されることになりそうだ。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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