経営・戦略

2024.08.21 15:30

米ウォルマート、中国EC大手JD.com全株を売却意向 最大5400億円調達へ

Joe Raedle/Getty Images

Joe Raedle/Getty Images

米国小売り大手のウォルマートは、同社が保有する中国のEコマース大手、JD.com(JDドットコム)の全株式を売却する意向であることを明らかにした。同社はこれにより、世界第2位の経済大国である中国における戦略を見直す。

米国のナスダック市場と香港市場に上場するJDドットコムの株価は、ナスダックのアフターマーケットで一晩にして10%下落した後、8月21日に香港市場でも急落した(翻訳記事公開時点で10.25%安)。ウォルマートの広報担当者はフォーブスに寄せた声明の中で、同社が持つJDドットコムの全株式(持分比率9.4%)を売却する意向を確認した。20日付けのブルームバーグの報道によると、ウォルマートは自社が保有する1億4450万株のJDドットコム米国預託株式(ADS)を、1ADSあたり24.85ドルから25.85ドルの範囲で売却する意向だという。

「この決定により、ウォルマート・チャイナとサムズクラブによる強力な中国事業に集中し、他の優先事項に向けて資本を投下することができる」とウォルマートの広報担当者はEメールでコメントしている。

ウォルマートはJDドットコムとの「商業的関係」は継続すると強調したものの、その内容の詳細については明らかにしなかった。ウォルマートは2016年、JDドットコムにオンラインマーケットプレイスのYihaodianを売却した際、その対価としてJDドットコム株の5%を取得した。その後、ウォルマートはその持分比率を9%以上にまで増やし、JDドットコムと協力関係を築くことで、JDドットコムが中国全土に張り巡らせた広大なサプライチェーンを利用して食料品やその他の商品をオンラインで販売することを目指した。

しかし、JDドットコムは現在、競争の激化に直面している。2015年に設立された競合のPDDホールディングスは、大幅なディスカウント商品で中国の買い物客を惹きつけ、時価総額でJDドットコムを上回ることに成功する。今月初め、PDDホールディングス創業者の黄崢(コリン・ファン)は、508億ドル(約7兆4024億円)の資産を持つ中国一の富豪となった。一方、JDドットコム創業者の劉強東(リチャード・リュー)の純資産は、フォーブスの推計によると現在53億ドル(約7720億円)となっている。

「ウォルマートが最初にJDドットコムに投資したのは、中国のEコマース市場の急成長から恩恵を受けるためだった」と、中国の投資銀行Chanson&Coでマネージングディレクターを務めるシェン・メンは話す。「しかし今、JDドットコムはPDDホールディングスや他の食料品配送プラットフォームとの競争に直面しており、同社の成長を抑え込む圧力が高まっている」

米国記事の公開時点では、JDドットコムはフォーブスによるコメントの要請に応じていない。創業者の劉はJDドットコムが直面している問題について警告を発し、社内メモで変革を求めたこともあるが、同社には好転の兆しもある。

先日発表した第2四半期決算(Q2)で、同社は市場予想を上回る業績を報告した。6月末を期末とするQ2決算における純利益は、前年同期比92.1%増の126億元(約2573億円)、総売上高は同1.2%増の2914億元(約5兆9523億円)だった。同社は食料品から家電製品に至るまで、買い物客を引き付けるためのプロモーションを積極的に行い、独自のローコスト戦略を実践している。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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