北米

2024.08.16 09:30

ハリスとトランプどちらが勝っても中国政策に変化なし、米大統領選

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秋の米大統領選に出馬する民主党のカマラ・ハリスと共和党のドナルド・トランプは、国策や政策について大きく異なるビジョンを打ち出しているが、こと中国貿易と投資に関してはかなり似通っている。2人とも既存の敵対的な基調を強めることはないにしても、維持しそうな気配が十分感じられる。戦術や基調には違いがあるだろうが、根本的な立場は変わらない。

もちろんトランプは大統領在任中に中国を叩いたことでよく知られている。中国からの輸入品に関税を課し、中国政府に政策を変更するよう厳しい要求を突きつけた。現在展開している選挙戦では、再選を果たした場合にこうした路線を継続する意向を明確に示している。

ハリスはバイデンの政策を継続しそうな気配だ。バイデンの路線から外れることもなきにしもあらずだが、ハリスの外交、経済面での経験が限定的であることを考えれば、バイデンの路線を継続するのはまず確実だろう。そしてバイデンは2020年の選挙戦ではトランプを激しく批判したが、それ以降、中国に対してはトランプを上回る敵意を示している。

少し過去を振り返ると有益な視点が浮かび上がってくる。トランプは2016年の選挙戦当初から、グローバル化全般、特に中国をかなり敵対視していた。グローバル化が米国人から雇用を奪い、特に中国の政策に責任があると主張。中国政府の国内企業への補助金や特許侵害、また中国で事業を展開する米企業に中国企業との提携を強い、技術や企業秘密の移転を要求するという手法をやり玉に挙げた。中国政府に政策の見直しを迫るため、トランプは米国に流入する中国製品に関税を課した。

トランプは2018年9月に約2000億ドル(約29兆4100億円)相当の中国からの輸入品に10%の関税をかけた。中国政府が断固とした姿勢を崩さなかったため、翌年5月に関税を25%に引き上げた。同年8月には追加で3000億ドル(約44兆1200億円)相当の輸入品に10%の関税をかけ、翌月にはその関税の対象に1120億ドル(約16兆4700億円)相当分の輸入品を加えた。トランプはまた、中国へのテック関連商品の販売の規制を強化し、ファーウェイ(華為)を筆頭に米国に進出する中国企業に厳しい姿勢をとった。2020年1月にトランプは中国政府が望ましい政策変更を行った後に関税を撤廃することで中国側と合意した。だが、その合意は実を結ばなかった。

2020年の大統領選でバイデン陣営はトランプの高圧的な振る舞いを批判したが、バイデンは大統領に就任するとトランプが導入したすべての関税を維持した。バイデン政権で通商代表を務めるキャサリン・タイはこうした関税について、トランプが不満を示したのと同じ公平でない政策を中国政府に改めさせるための手段だと説明した。
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翻訳=溝口慈子

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