宇宙

2024.08.21 10:30

「史上初」だらけの2024年後期宇宙計画と、NASA予算削減で抹消されるプロジェクト

ⒸSpaceX

マスクの「スターシップ」とベゾスの「ニューグレン」

第2段ロケットが宇宙船を兼ねる「スターシップ」。2026年に予定されるNASAの月面探査計画「アルテミス3」においては有人月着陸機に選定されているⒸSpaceX

第2段ロケットが宇宙船を兼ねる「スターシップ」。2026年に予定されるNASAの月面探査計画「アルテミス3」においては有人月着陸機に選定されているⒸSpaceX

スペースX社の「スターシップ」(全長121m)は、5回目の無人飛行テスト(IFT 5)が9月に行われる。その開発ペースは非常に早く、年内に複数回のテストが行われる可能性もある。前回6月の飛行テストでは、第1段を洋上に軟着水させることに成功したが、今回は射場に建設されたタワーから伸びるアームで、自律的に帰還する再利用型の第1段をキャッチすることを試みる。
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ブルーオリジン社の新型ロケット「ニューグレン」。第1段にはエンジン「BE-4」を7基、第2段にはBE-3Usを2基搭載ⒸBlue Origin

ブルーオリジン社の新型ロケット「ニューグレン」。第1段にはエンジン「BE-4」を7基、第2段にはBE-3Usを2基搭載ⒸBlue Origin

9月29日には、ジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジン社の再利用型の新型ロケット「ニューグレン」が初打ち上げに臨む。全長は82m(2段仕様)。今回の打ち上げに成功すれば、運用されたロケットとしては史上3番目に巨大なロケットとして記録される。

ニューグレンは初フライトでありながら、NASAの火星探査機「EscaPADE(エスカペイド)」を搭載する。火星大気と太陽風の相互作用を調査するこの探査機は2機で構成され、1機当たりの全備質量は550kg、うち350kgは推進剤が占める。この機体はRocket Lab(ロケットラボ)社によってわずか5500万ドル(81億4000万円、1ドル148円換算、以下同)で製造された。それは過去の火星周回機のわずか10分の1の予算だ。

火星、木星、小惑星、月の探査スケジュール

そのほかの注目すべき探査機ミッションを列記してみたい。日付は打ち上げ予定日、第4四半期は会計年度ではなく10〜12月を意味する。また、機体名に続くカッコ内は運用団体を示す。

●10月7日 小惑星探査機ヘラ(ESA:欧州宇宙機関)

2022年9月、NASAは探査機「ダート」を小惑星ディモルフォスに衝突させ、その軌道を偏向させることに成功したが、その後の小惑星を近接観測するため「ヘラ」を送り出す。全備質量は1150kg。ファルコン9で打ち上げられ、2026年12月にディモルフォスに到達する。

●10月11日 木星衛星探査機「エウロパ・クリッパー」(NASA)

木星の衛星エウロパを、木星の周回軌道上から観測する探査機。地下に広がる内部海に生命が生まれる条件が整っているかを探る。ただし、搭載するトランジスタが木星の放射線に耐えられない可能性があることが7月に判明。打ち上げがスリップする可能性もある。ファルコン・ヘビーで打ち上げられる。
NASAの「エウロパ・クリッパー」は24基のスラスターを搭載。質量6000kgで、うち2750kgは推進剤が占める。太陽電池パネルを展開した際の全幅は30mに及ぶⒸNASA

NASAの「エウロパ・クリッパー」は24基のスラスターを搭載。質量6000kgで、うち2750kgは推進剤が占める。太陽電池パネルを展開した際の全幅は30mに及ぶⒸNASA

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編集=安井克至

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