宇宙

2024.08.22 10:30

火星で海洋相当量の「液体の水」発見、生命存在の可能性も 利用には大きな難点が

欧州宇宙機関(ESA)の探査機マーズ・エクスプレスが撮影した、火星のカラリス・カオスと呼ばれる地域の画像。かつては古代の湖として大量の水が存在したと考えられている。ESAが2024年8月7日に公開(ESA/DLR/FU Berlin)

欧州宇宙機関(ESA)の探査機マーズ・エクスプレスが撮影した、火星のカラリス・カオスと呼ばれる地域の画像。かつては古代の湖として大量の水が存在したと考えられている。ESAが2024年8月7日に公開(ESA/DLR/FU Berlin)

まだ明らかになっていないこと

惑星の歴史の解明は、入手可能なデータに基づく調査と推論の問題が大半を占める。科学者は証拠を評価する際に、例えば火星の岩石の物理学が地球の岩石と同じ法則に従っているなどの、多くの仮説を立てる。そして、新たな発見が別の解釈につながる可能性がある。

現時点で、研究チームは今回の「入手可能なデータは、水が染み込んだ状態の中部地殻によって最もよく説明できる」としている。研究の性質上、大きさや深さ、距離などに関する多くの不確実性もあるため、火星表面下に潜在する液体水の正確な量を推定するのは困難だ。だが、「存在が仮定されている古代の火星の海を満たしていた」可能性のある水量であることを、今回の証拠は示していると、研究チームは述べている。

重要な指摘

論文執筆者の1人で、カリフォルニア大サンディエゴ校のスクリプス海洋学研究所の教授を務めるバシャン・ライトは、火星の表面、内部、気候や惑星としての「進化を解明するためには、火星の水循環を理解することが不可欠だ」と指摘している。「水がどこにあるか、そしてそこにある水量はどのくらいかを特定することが、有益な出発点となる」と、ライトは説明した。

大きな数字

地下1万2262m。これはロシア北西部で実施されていた、地球の地殻深部の科学調査プロジェクト「コラ半島超深度掘削坑」の最深到達点だ。地球上で最も深い人工の穴であり、論文によると、今回発見された水が存在する可能性のある深さの推定下限値に相当するという。掘削は1990年代初めに中止されたが、最深記録はまだ破られておらず、技術的な難題を伴うことが浮き彫りになっている。それでも中国は将来的に、野心的なプロジェクトによってより深い穴を掘削することを目指している。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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