この官僚は「全く個人的な考え」と断ったうえで、「どんなに勇ましいことを言っても、日本が中国に勝利できる可能性はない。自分たちが最低限やり抜かなければいけないのは、日本国民の生命・財産の保護だと思う」と話す。日米で安全保障協議を行いながら、この官僚は時々、「台湾問題への関与を進めることが、果たして良いことなのか」と自問する時があったという。「こんなことを言えば、腰抜けだと言われるかもしれない。でも、日本人が亡くなってからでは遅い。そんな時、誰もよくやったとは言わないだろう」
米国は米国の国益を求めて動いている。最近のエマニュエル駐日米国大使の動きを見ても、よくわかる。エマニュエル氏は5月、南西諸島の与那国島と石垣島を訪れた。報道によれば、エマニュエル氏は与那国島で記者団に「私たちが演習をしているのはすべて日本全体の防衛のためだ」と語った。そのエマニュエル氏は9日、長崎市で開かれた平和祈念式典を欠席した。長崎市がイスラエルを招待しなかったことに反発した。他の主要国と欧州連合(EU)も米国の考えに従った。関係者の一人は「米国が手を引けば、欧州のウクライナ支援は行き詰る。エマニュエル氏はハリス政権が誕生した場合に大統領補佐官になるかもしれない。言葉は悪いが、長崎市ではなく米国を取ったということだろう」と語る。その米国が台湾有事に備えた動きをしている最大の理由は、中国との覇権競争に打ち勝ち、超大国としての地位を維持することだろう。
台湾有事を起こさないため、あるいは不幸にも台湾有事に至った場合でも日本の国益を損なわないため、日本の防衛力と日米同盟は、共に強化されるべきだろう。ただ、それもひたすらに、日本人の生命と財産を守るためであってほしい。一人の犠牲も出さないよう努力することが、32年という短い生涯を終えた晴気少佐を慰霊する道だ。それは「米国まずありき」ということでは決してない。岸田文雄首相は長崎の平和式典を巡り、長崎市と米国などとの間で仲裁に動かなかった。晴気少佐も今頃、泉下で嘆いていることだろう。
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