北米

2024.07.01 13:45

やることなすことすべて裏目に バイデン氏は米大統領候補を交代するのか

Photo by Kyle Mazza/Anadolu via Getty Images

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11月の米大統領選に向け、6月27日に行われた第1回テレビ討論会は、現職のバイデン大統領の高齢に伴う健康不安がクローズアップされる惨憺たる結果に終わった。現状、トランプ前大統領の優勢は揺るがない情勢だ。米州の政治・経済情勢に詳しい、米州住友商事会社ワシントン事務所の渡辺亮司調査部長の周辺でも早速、民主党支持者たちから「バイデン氏交代論」が浮上し始めたという。ただ、大統領選まで半年を切ったなか、民主党内のこうした議論自体が、「もしトラ」を「ほぼトラ」に押し上げていると、渡辺氏は指摘する。

バイデン氏は81歳、トランプ氏は78歳という高齢対決。オバマ元大統領の選挙参謀デビッド・プラフ氏は「トランプはバイデンより3歳しか若くないのに、30歳若く見えた」と語った。討論会を主催したCNNが視聴した有権者を対象に行った世論調査によると、討論会では67%がトランプ勝利、33%がバイデン勝利と回答した。

渡辺氏によれば、バイデン陣営は健康不安を打ち消すため、様々な努力を続けていた。エアフォースワン(大統領専用機)に搭乗する際は、比較的短いタラップを使うようにした。移動の際はスニーカーに履き替え、転倒しないよう気を配った。討論会の1週間前から公務を後回しにし、準備を優先して大統領専用の山荘「キャンプ・デービッド」で合宿していた。こうした情報を米国民が知ることで、「そんなに準備したのに、隠せないほど高齢不安が深刻なのか」という逆効果をもたらした。渡辺氏は「テレビ討論会は通常、民主、共和両党のコアな支持者が主に視聴します。無党派層をはじめ、政治に関心が低い国民はインターネットやSNSで討論会のダイジェストを見る程度ですが、逆にそこで、バイデン氏の健康不安を浮き彫りにする映像が繰り返し流れています」とも語る。

また、渡辺氏によれば、両陣営は討論会の前から準備を重ねたことに加え、情報戦も繰り広げていた。トランプ氏は5月の時点で、バイデン氏を「最悪の討論者」と呼んでいたのに、討論会前週になると、「立派な討論者で、過小評価すべきでない」と語った。これは、「米国民のバイデン氏に対する期待値を高める狙い」(渡辺氏)があったという。バイデン氏が討論会本番で不明瞭な言葉遣いを繰り返したことで、国民の期待したバイデン像との「落差」が浮き彫りになった。

さらに、今回の討論会では、発言者以外はマイクの音源を消していた。そのため、2020年大統領選のようにトランプ氏がバイデン氏の発言を遮る場面はなかった。逆に、トランプ氏が「規則を守る大統領らしい人物」という印象を与える効果も生まれた。渡辺氏は「バイデン陣営が求めたマイク消音という新ルールも裏目に出て、バイデン氏にとっては逆効果だったようです」と語る。
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文=牧野愛博

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