「かわいい」と10代、20代の女性たちから圧倒的人気を集める歌姫。国内外に熱狂を生む「LANA現象」を巻き起こす彼女の「今」に迫る。
「20歳になって2カ月だけど、穏便にやり過ごすということがほんとばからしいと思うんですよ」
彼女は強いまなざしで、そう言い放った。キラキラと輝くアイメイクに、カラフルでキュートなネイル。ポジティブさに満ちた笑顔、飾らない振る舞い。「新世代ギャルアーティスト」という形容とともに、2024年、大きな現象を生んでいる存在、それがLANAだ。
若年層の間でかつてないほどの盛り上がりを見せるヒップホップのシーンから頭角を現し、この1、2年で瞬く間にヒットメイカーの座に上り詰めた。武器は、魂が発露するかのようなボーカルパフォーマンスだ。時に演歌にすら接近する、コブシの利いたソウルフルな歌唱。そして、ラップに影響を受けた軽やかでリズミカルな発声。TikTokで使われるような短い曲のパートでさえ、一度聴くだけで彼女の声は記憶され、口ずさみたくなる。
LANAがリリースする曲は、「TURN IT UP(feat.Candee & ZOT on the WAVE)」「99」をはじめ、次々とTikTokや各種ストリーミングサービスでヒット。サマーソニックをはじめさまざまなフェスにも抜擢され、ついに今年はAwichらとともに、世界最大の野外音楽フェス、米コーチェラ・フェスティバルにも出演。ソロ・ライブは当然のようにソールドアウトを連発し、同世代の女性を中心に熱狂的なコミュニティをつくり上げている。
『19』、さらに『19.5』と、自身の年齢を作品タイトルに掲げながら若き視点で世の中を切り取ってきた彼女は、ついこの間20歳を迎えたばかり。しかし、大人の振る舞いをしなくてはという意識にとらわれてしまい、気がついたら世の中が勝手につくり上げた責任感やルールに押しつぶされそうになっていた。「大人にならなきゃと思ってたのか、嫌なことをされても笑って流してる自分がいたんです。でも、そうじゃなくない? と思ったんですよね」
これまでも、ギャル文化を代表するアーティストは、若い自分自身でしか見えない世界を音楽に投影することで、同世代の熱い支持を得てきた。1990年代に「SWEET 19 BLUES」を歌ったのは安室奈美恵で、それをモチーフに、2000年代に「19 Memories」としてさらに若い世代へと伝えていったのは加藤ミリヤだった。
そして令和の今、LANAの時代がやってきた。「自分が誰かと考えるよりも、人生楽しい! という感じで生きていきたい」と発言してきたLANAは19歳を過ぎ、今20歳になり、大人の階段を上っている。と同時に、10代の自分を忘れないように努めているようにも見える。