音楽

2023.08.25 11:30

「希望と言えることって何があるの?」 ちゃんみなが世界に問う価値観

ちゃんみな 写真=ヤン・ブース

ちゃんみな 写真=ヤン・ブース

人種差別やルッキズムの“痛み”をリリックに込めて、既存の枠にとらわれない価値観を発信するラッパー、ちゃんみな。次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2023」のENTERTAINMENT & SPORTS部門の受賞者に選出された。

圧倒的な表現力で聞き手の心を揺さぶり「共感」と「憧れ」を生む、彼女の信念とは。


2022年4月、YouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」にて公開された「美人」の歌唱映像 は1864万回(2023年7月末時点)も再生され、世間に大きな衝撃を与えた。

ルッキズム(外見重視主義)に対する怒りや反発と、自分と同じように苦しむ人へ手を差し伸べる想いを乗せた歌/ラップが、女性を中心に多くの人の価値観を揺さぶった。

ちゃんみなが「FXXKER」でメジャーデビューしたのは2017年、彼女が18歳の頃。3歳からピアノやバレエを学び、小学生のときにバレエからヒップホップダンスへ転身。その後もピアノに触れながら、人に言えなかった感情や悩みを吐き出すようにノートに言葉を書き留めた。

だからこそデビュー当時から確かなラップスキルとパフォーマンス力を備えていたにもかかわらず、世間の評価は「見た目のことが8、9割を占めていた」と振り返る。ストレスで痩せてしまった時期には「かわいくなった」「綺麗になった」という言葉が飛んでくることにも違和感を覚えた。

「周りを見ると狂ったようにダイエットを頑張っている子や、誰かに言われた言葉で傷ついて命を落とした女性もいて、許せない気持ちになったんですよね。なんでそんな言葉がこんなにも綺麗な子たちに投げられなきゃいけないんだって。ルッキズムで悩む自分自身のことも解放してあげたかった。それで書いたのが『美人』でした」

21年4月にリリースした「美人」は想像以上の反響を得た。それまでもちゃんみなは自分自身のことを歌いながらも聴き手をエンパワーする音楽を届けていたが、「美人」こそが、自分の音楽が誰かの生き方を変えることを深く自覚するきっかけの曲になった。

そしてリリースから1年経って公開された「THE FIRST TAKE」の映像が、さらに時代の空気を変えた。22年の夏、大型フェスに出演すると世間の風向きががらりと変わっていることをはっきりと体感した。

23年3月に開催されたワンマンライブ『AREA OF DIAMOND』での「美人」のパフォーマンスも話題になった。曲中、ちゃんみなは横浜アリーナの大きなステージの上で自らメイクを落としたのだ。“すっぴん”で逞しく歌い上げる姿に、会場からは肯定的な歓声が湧いた。ちゃんみなが「美」の定義を塗り替えたことを証明する一幕だった。

「あれはオーディエンスへの信頼があったからこそできた演出でした」というちゃんみなに、彼女が思う「美」や「かっこよさ」とは何かと問いかけると、「いい質問ですね」と相槌を打ってこう答えてくれた。

「自分を愛してくれている人が誰なのかをしっかりと認識して、その愛を背負いながら生きている人がかっこいいなと思います」

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」も6年目。2023年はパワーアップし、120人を選出した。彼ら、彼女たちが自らの言葉で、過去と今、そして未来を語る。
【30 UNDER 30 特集号が現在発売中 / 受賞者一覧を特設サイトにて公開中

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文=矢島由佳子 編集=田中友梨 写真=ヤン・ブース スタイリング=加藤吏沙 ヘア=北村雄太 メイク=野﨑裕子

連載

30 UNDER 30 2023

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