映画

2023.08.11

単なる娯楽作品ではない。映画「バービー」が放つ、深いメッセージ

バービー役のマーゴット・ロビー (右)とケン役のライアン・ゴズリング(左) 。映画「バービー」より(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

全米で7月21日に公開されて以降、3週目で興行収入が10億ドル(約1425億円)を突破し、この夏最大のヒット作品となるのではないかと話題を集める映画「バービー」。女性監督の作品としては、歴代のオープニング興収記録を塗り替えたとも言われている。

実は筆者は、この「バービー」を監督したグレタ・ガーウィグに、以前から注目していた。

彼女はもともと脚本家志望で、自主製作映画の運動(マンブルコア)にも関わっていた。2010年に、現在のパートナーであるとノア・バームバック監督の「ベン・スティラー 人生は最悪だ!」に俳優として出演し、注目を集める。その後、同じバームバック監督の「フランシス・ハ」(2012年)では、主演の他に共同脚本も務め、映画監督へのステップを踏み始める。

演技者として「ローマでアモーレ」(ウディ・アレン監督、2012年)や「20センチュリー・ウーマン」(マイク・ミルズ監督、2016年)などの作品に出演しながらも、2017年には初めての監督作品「レディ・バード」を発表。自ら脚本も担当した自伝的作品は、アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など5部門にノミネートされた。

2019年、監督としての第2作、ルイーザ・メイ・オルコットの小説「若草物語」を原作とした「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」を発表。こちらもアカデミー賞で作品賞、脚色賞を含む6部門にノミネートされる。いわば、将来を嘱望されていた新人監督だったのだ。

そのガーウィグが映画監督としての3作目に選んだのが「バービー」だった。この意外な選択を聞いたとき、少し驚かされた。これまでどちらかというと作家性の強い作品に関わってきたガーウィグが、アメリカで最も親しまれてきた玩具のキャラクター、バービーを主人公とした映画を手がけることになったからである。
バービーたちが暮らすバービーランドはピンクで彩られている(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

しかも、共同で脚本に名を連ねたのは、これまた作家性の色濃い作品を発表してきた映画監督のノア・バームバック。いったい、どんな映画になるのか、興味は高まるばかりだった。
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文=稲垣伸寿

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