人種差別を受けた痛みを音楽に
日本人の父と韓国人の母のあいだに生まれたちゃんみなは、幼少期を韓国・アメリカ・日本で過ごした。他者から投げられる、国籍やアイデンティティにまつわる言葉に困惑することも少なくなかった。そういった経験から湧き上がる想いを胸に、21年10月に武道館公演を成功させてからは本格的に世界へと視野を広げて、国内に限らず韓国やアメリカの名だたるプロデューサーとも音楽制作に取り組んでいる。翌年9月には念願の韓国デビューを果たした。
最新アルバム『Naked』収録の「RED」には、母が差別的な言動を浴びせられている場面を目撃した11歳のときの体験をリアルに刻み込んで、《サランヘ》《I love you》と国境を越えた愛を願う気持ちを込めた。
社会にこびりついているあらゆる枠組みを取っ払って、時代を前進させる価値観を発信するちゃんみなにとって、次の挑戦は世界の架け橋となれる音楽を生み出すことだ。
「BIGBANGとかBoAさんが日本での韓国のイメージをよくしてくれたことにすごく感謝しているんですよね。大きなことを言ってしまうと、『ちゃんみながいたから日本や韓国、アジア各国が仲良くなったよね』と思ってもらえるようなアーティストになりたいです」
インタビューも終わりかけの頃、「ちゃんみなさんは未来に希望を見ているか、それとも悲観しているか?」と聞いてみると、ここまで話した美の価値観や人種差別以外のことも含めた社会全体を見渡して、最後にもう一度、柔らかい心から強い信念を語ってくれた。
「どちらかというといまは悲観の方が大きいかもしれないです。正直、希望と言えることって何があるの?って思いますね。差別への偏見はなくならず、とても子どもが産めるような環境じゃない。だからこそやっぱり、愛を背負って生きていくことが私の中では一番大事だなと思います」
トップス53325円、スカート84375円(サンディー リアン/リディア Tel:03-3797-3200)、ネックレス25300円、バングル11000円(ともにジュスティーヌ クランケ)シューズ26400円(センソ / 以上3点 ザ・ウォール ショールーム Tel:03-5774-4001)
ちゃんみな◎1998年10月14日生まれ。日本語、韓国語、英語を操るラッパー、シンガー。作詞作曲のみならず、トラック制作、ダンスの振り付けなどすべてセルフ・プロデュースで行う。2017年、高校在学中にメジャー・デビューし、2022年9月には韓国での活動もスタート。今年8月にはドラマ『ハヤブサ消防団』主題歌の「命日」をリリースした。