2024年5月にリリースした最新シングル「MY LIFE」。矢継ぎ早にスタイルを変えながら自分を表現していくMVが話題となった。
20歳を迎えてからLANAとして意識的に取り組んでいることはあるか? という質問に、少し間をあけてから彼女ははにかみ、こう打ち明けてくれた。
「実は、あえて自分から落ちにいってるんですよ。忙しすぎると、ちょっとヘラってる(=精神的に病む)暇すらないじゃないですか。だから時間をとって、昔好きだった平成の歌を聴きながら当時のシチュエーションを思い出すようにしてるんです。今はLANAとして乗り越える力をもってるけど、当時は頼れるものがなかった。だから、家を出たりお母さんとうまくいかなかったり、恋愛で失敗したり友達に裏切られたり、行き詰まってばかりだった。そんな過去のつらかったことを思い出して、忘れないようにしなくちゃって。そういったことをもとに、歌詞も書く」
それを彼女は、「フォルダ分けして病む」とも称する。実にユニークな表現だ。親、恋人、友達といったそれぞれのフォルダができていて、すべてに固有の病みがあるとのこと。「曲でもSNSでも、私が病んで発言することでファンのみんなは救われた気持ちになると思うんです。あぁ、この人も病んでるんだなって。だから私は、意識的に、病んだ自分をみんなに伝えるようにしています」。
一見すると明るいが、実のところ陰を抱えている──。「内省的」というのは、多くのギャル系アーティストに共通のマインドだ。LANAも、自身のことを「基本はネガティブ」と語る。誰にも触れられたくない悲しい自分がいて、でも同時に、「人生楽しい!」と前を向いて突き進むという強さも併せもっているのだ。
母、兄、姉、家族の存在
兄LEXとは2024年に入り、コラボレーション楽曲「明るい部屋」(4月)、「ティファニーで朝食を」(7月)をリリース。「POP YOURS 2024」では初共演も果たした。
神奈川県の湘南に生まれたLANAは、兄LEXもヒップホップ界を代表する若き天才で、昨年「30 UNDER 30 2023」にも選出された。最近はふたりでのコラボ楽曲もリリースし、今ユース世代にとって日本一有名な兄妹になりつつある。また、姉のLiLiはダンサーで、LANAのステージのバックダンサーとしても活躍中。3人兄妹全員が、昔から音楽やダンスといったカルチャーに夢中になる日々を送ってきた。そんな環境だったが、両親が離婚したこともあり、LANAは学生時代にグレてしまったという。あまり自宅には帰らず、帰ったら母親にお金をせびる日々。自由になりたい気持ちが募り、母親と喧嘩した結果、ついに家を出てしまったそうだ。里親を探し児童相談所にひとりで出向き、家族と離れて暮らすことに。数カ月たち、施設に飽きて家に戻るも、そこからは歯止めが利かなくなりどんどん生活は荒んでいった。今、彼女は後悔したような表情で言う。「完全なる自由を与えられると、人は楽しくなくなるんですよ」