いずれにせよ、カプースチン・ヤールに対する攻撃でロシア側が受けるダメージは主に政治的なものかもしれない。これはウクライナ側による多くの長距離ドローン攻撃に当てはまることだ。オーストラリア陸軍退役少将のミック・ライアンは以前、ウクライナによるロシア国内の目標やクリミアのケルチ橋に対する攻撃について「軍事的というより政治的なものであり、ロシア国民の前でプーチンにプレッシャーをかけ、『ロシアを守れていない』とばつの悪い思いをさせるのが狙いだ」と述べている。
ロシアにとって不吉なことに、ロシアの最も重要な軍事施設や産業施設がウクライナのドローン攻撃にさらされていることが、今回の攻撃によってまた示された。たしかに、ウクライナ側は防空システムの深刻な不足に苦しんでおり、都市や航空基地はロシア側の攻撃にさらされやすい状態になっている。
だが、防空システムが不足しているのはロシア側も同じだ。ウクライナの長距離攻撃ドローンは最長で1300km以上飛行する。ウクライナが狙うロシア側の目標は前線から1300km以内に何千とあるだろうし、ロシア空軍はそのすべてと占領下のウクライナにいる自軍部隊を同時に守るのはまず不可能だろう。
ロシア国内にある基地や工場、宇宙関連施設のうち、どこを守り、どこを守らないかをロシア空軍は選択しなくてはならない。カプースチン・ヤールは守らないことにしていたようだ。その結果、この歴史的な実験場は炎上することになった。
(forbes.com 原文)