北米

2024.07.11 17:00

米コロラド州で腺ペストの感染報告 住民に警戒呼びかけ

ペストから身を守るには?

ペスト菌は世界中に分布しており、世界保健機関(WHO)によれば、オセアニアと南極を除くすべての大陸で動物とノミの間で自然循環している。米国ではアリゾナ州、コロラド州、ニューメキシコ州などの西部・南西部やロッキー山麓で感染者が出やすく、米疾病対策センター(CDC)によると全米で毎年7件前後の感染報告がある。

世界的には症例数ははるかに多く、CDCによれば2010~15年にマダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルーを中心に3248人が感染し、うち584人が死亡した。

感染リスクを減らすため、CDCは生活環境に生息するネズミの数を減らし、ノミに刺されないよう対策をとるよう推奨している。具体的には、キャンプやハイキングなどの際にはノミに効く虫除け剤を皮膚に塗布すること、ペットや衣服にノミ駆除剤を使用すること、掃除をしたりペットの餌をきちんと管理したりして自宅、職場、レクリエーション施設などの周辺からネズミが棲み付きやすい環境を排除すること、建物内にネズミが侵入できないようにすることなどだ。

ペストのワクチンは19世紀後半に登場したが、現代の臨床基準で評価されたものではなく、あまり効果的ではないようだ。米国では市販のペストワクチンはなく、一部の国で業務上感染リスクの高い人を対象にごくまれに接種が行われるだけである。新しいペストワクチンが開発中だが、CDCは「当面市販される見込みはない」と述べている

現代でこそペストの流行は比較的小規模で、抗生物質で治療できるが、歴史上最大の死者を出した感染症の代名詞として悪名高く、何世紀にもわたって人類を恐怖に陥れてきた。14世紀に欧州の人口の3分の1に相当する2500万人の命を奪った黒死病や、その約800年前にアジア、欧州、アフリカの一部で猛威を振るい、当時の世界人口の約半分にあたる3000万~5000万人を死に至らしめた「ユスティニアヌスのペスト」などは、人類史上最悪のパンデミックとして知られている。研究によれば、ペストによる死者の総数は2億人を超えるとみられる。

抗生物質が利用可能であるにもかかわらず、医療安全保障の専門家はペスト菌がバイオテロに使用される可能性を懸念しており、米国をはじめ各国の保健当局は対策を準備している。米国では「国家安全保障に対する潜在的脅威」として「優先度の高い」病原体とみなされている。専門家はテロリストがペスト菌を生物兵器化する恐れは低いと強調しているが、歴史の中で実際にペスト菌が生物兵器に使用された事例はある。

猫や犬に感染する恐れは?

オレゴン州で確認されたペスト患者は、ペットの猫から感染したとみられている。猫はネズミを捕まえて食べる習性があることから、保菌したネズミや、そのネズミに寄生したノミから感染しやすいと考えられる。CDCは、ペストが発生した地域の住民に対し、犬や猫と同じベッドで眠らないように勧告している

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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