欧州

2023.06.16

はびこるネズミにお手上げのパリ、600万匹と仲良く共存へ方針転換

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パリの街中でネズミを目撃するのはよくあることで、目新しい体験でも何でもない。世界各地の大都市の例に漏れず「光の都」の名を冠するフランスの首都においても、ネズミは「日常生活」の一面だ。斬新なのは、ネズミと平和的に「同居」する計画を立てようというパリ市の公式方針である。

数十年にわたってネズミと闘ってきたパリ市役所はこのほど、ネズミと共存する方法を探り、これまでと異なる害獣対策のアプローチ開発を目指す委員会を立ち上げた。公衆衛生担当の副市長は、ネズミとの共存はパリ市民にとって「効果的」かつ「耐えがたいほどではない」対処法だと述べている。

ニュースサイトPolitico(ポリティコ)は「パリのアンヌ・イダルゴ市長が光の都を蹂躙するネズミたちに向けて、なぜ友達になれないのかとメッセージを送った」と報じた。

公共記念碑と比較されるネズミの存在感

英ロンドンや米ニューヨークなど世界の多くの大都市と同様、パリでもネズミは日常の一部と化し、地元メディアが冗談交じりに「パリの不快な装飾」の一例に挙げるほど市民はその存在に慣れきっている。レストランでネズミを見かけても気にする人はいないのが普通で、誰かが文句を言っても店員は大概「大丈夫ですよ」と答えるだけだ。

パリは実際、インド・デシュノク、ロンドン、ニューヨークに次いで世界で4番目にネズミの多い都市で、人口(210万人)よりもネズミの生息数(600万匹)のほうが多い。

仏週刊誌Le Point(ル・ポワン)は、パリとネズミには「長い歴史がある」と記している。何世紀も前からネズミは何らかのかたちで日常生活に介在し「19世紀には下水に群れをなし、テーブルの上を我が物顔に駆け回り、手袋や鍋の中で死んでいた」という。「パリにおいて、ネズミとの共存は新しいことではない。何世紀にもわたり、ネズミはパリ市民の最も古い同居人であり、嫌悪感、ヒステリー、伝説、ファンタジーを同時に喚起してきた」

アニメ映画『レミーのおいしいレストラン』を覚えているだろうか。料理の得意なネズミが、パリの一流レストランで見習いシェフを助けて活躍する物語だ。
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編集=荻原藤緒

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