ヘルスケア

2024.05.12 18:00

ペットが飼い主に「薬に耐性をもつ菌」を感染させる可能性、最新研究

木村拓哉
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Getty Images

米国では、6500万世帯以上が犬を、4650万世帯以上が猫を飼っている。しかし最新の研究によれば、私たちのペットは、有害な薬剤耐性菌(抗生物質に耐性を獲得した菌)を保菌している可能性があるという。

ポルトガルと英国の研究者が共同で行ったこの研究は、4月下旬にスペインで開催された欧州臨床微生物・感染症学会(ESCMID)で発表されたもので、病気のペットと健康な飼い主のあいだで薬剤耐性菌が伝播したことを示している。

研究チームのリーダーであるリスボン大学薬剤耐性研究所のジュリアナ・メネゼスは、「最新の研究で示された、人と、ペットを含む動物のあいだで薬剤耐性菌が伝播することは、耐性レベルの維持という点で重大な事実だ」と述べている。「(私たちの研究は)コミュニティーにおける薬剤耐性菌の主な保菌者は人である、という従来の説に異議を唱えるものだ」

研究チームは、病気の犬猫と、その健康な飼い主について、尿、便、皮膚サンプルを調べた。チームはこれらのサンプルについて、大腸菌や肺炎桿菌(かんきん)を含む腸内細菌目細菌(Enterobacterales)の存在を調査した。こうした細菌は、人において髄膜炎や肺炎、敗血症などの重篤な疾患を引き起こす可能性があるものだが、これらの細菌の多くはしばしば抗生物質に対する耐性を獲得している。世界保健機関(WHO)は薬剤耐性を、「世界の公衆衛生と発展に対する最大の脅威の一つ」と呼んでいる。

検査したペットの半数以上、飼い主の3分の1以上が、薬剤耐性の高い細菌を保菌していた。英国で検査を受けたある犬では、多剤耐性大腸菌が特に多く見られた。これは、感染症の治療によく使われる数種類の抗生物質に耐性を持つものだった。

ペットとその飼い主から採取された細菌の一部は、遺伝子解析された。その結果、病気のペットが飼い主に細菌を感染させたことはほぼ間違いないことが示された。飼い主のなかには、薬剤耐性菌を保菌していた者もいたが、検査の時点では、すべての飼い主が健康だった。それでも、幼児や高齢者、免疫不全者など、ペットからの感染によるリスクが高い人もいるため、研究チームは病気のペットを飼っている人に注意を促している。

「ペットの体調が悪いときは、細菌が家中に広がるのを防ぐため、ペットを1つの部屋に隔離し、他の部屋を徹底的に掃除してほしい」とメネゼスは助言する。

このプロジェクトは、スイス、カナダ、ドイツの研究機関も参加するコンソーシアム「PETrisk(ペットリスク)」によるもので、ペットが薬剤耐性に与える影響を調べることを目的としている。

研究チームは、病気のペットと飼い主のあいだで薬剤耐性菌が感染することが、薬剤耐性の拡大に重要な役割を果たしている可能性があると結論づけ、監視機関に対して、病気のペットと飼い主の分析データを収集するよう求めている。

「ペットから人への薬剤耐性菌の感染について理解し対応することは、人と動物の両方における薬剤耐性と効果的に闘う上で不可欠だ」とメネゼスは強調している。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ

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