アジア

2024.07.02 11:00

中露朝の国境を流れ日本海にそそぐ「豆満江」の開放、3カ国の思惑とは

それならば、なぜプーチンはこのような案を持ち出したのだろうか? 

中国による豆満江を使った海へのアクセスは、19世紀の清朝時代にロシアに割譲されたが、その後中国は、長年にわたって再獲得を望んできた(河口近くには北朝鮮とロシアをつなぐ古い橋がかかっているが、高さが低く、その下を大型船が航行できない。今回の合意は、大型船舶が通れるように橋を改修することに関するもの)。

現在のプーチンは、中国政府に対して、「ウクライナ侵攻への支持」の見返りに提供できるものが乏しくなってきている。今回の提案は、中国国民の心を掴むものであろうが、大ロシア主義を狂信するモスクワのプーチン政権支持者たちは激怒するだろう。

大ロシア主義者に言わせれば、仮に船舶航行を許せば、すぐに中国は公然と領土を主張し始めるはずだ。だが、プーチンには明確な意図がある。もし中国が日本海に直接アクセスできるようになれば、戦略地政学的な構図は劇的に変化する。

現状、中国海軍がこの海域に入るには、朝鮮半島をぐるりと迂回するしかない。だが、提案が実現すれば、中国が日本(および領有権が争われている複数の島)に直接圧力をかけることが可能になる。こうして緊張が高まれば、米国と同盟国は、海軍力に関する予測、防衛機能、準備体制、リソースの再考を迫られるだろう。

これは、ウクライナ侵攻に抵抗する西側諸国と同盟国に対して、プーチンが仕掛ける、世界規模の戦略地政学ゲームの一環だ。キューバ、欧州、(イランを介しての)中東に加えて、いまや極東も標的となった。

ロシア政府は、かつての反NATO共産圏の再構築を目論んでおり、豆満江を通じた日本海へのアクセスを餌にして、中国をそこへ取り込むつもりのようだ。

ただし、中国は今のところ、西側諸国からの制裁のリスクを冒すことに価値はないと考えている。中国にとって、世界を分断させ、自国の輸出先を、経済的に順調とは言い難いロシアとその同盟国だけに限定することにメリットはない。

加えて、中国にとって、羅津港のような北朝鮮の港を利用することは、(中国がそう希望するときには)自国製品に北朝鮮製のラベルを貼って他国に輸出することで、自国への経済制裁を回避する方法になる。豆満江を通じて直接海に出るようになると、こうした手法は取れなくなる。

以上のような理由で、中国がプーチンの誘いに乗ることはなさそうに見える。少なくとも、今のところは。 

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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