外交上の配慮から、台湾は他国よりも控えめに舵の切り替えを行っている。米国と異なり、中国に対して露骨な敵意を示していない。また、米国や欧州連合(EU)のように中国からの輸入品に新たな関税を課したり、特定分野の投資を禁じたりもしていない。だが欧米や日本の経済界と同様に、台湾経済界が反中的な行動を取っていることは明白だ。
これらの経済界が中国を拒絶するビジネス上の理由はほぼ同じだ。世界の先進国は何十年もの間、調達や操業、投資において中国を魅力的な場所と見てきた。中国での生産コストは安く、操業は頼もしいものだった。中国政府は通常よりも厄介な要求を外国人に突きつけてきたが、低コストと大きな信頼性はこうした過大な要求を補って余りあった。貿易と投資は盛んに行われるようになったが、近年、このバランスは劇的に変化した。
中国の労働賃金は急速に上がり、世界(特にアジア)の他地域よりも上昇ペースは急だった。それに伴い、中国がかつて有していたコスト面での優位性は失われた。最近の人民元安はその優位性をいくらか回復させたが、外国企業は通貨の価値の変動性を認識しており、必然的に長期的な観点からの決定においてはほとんど考慮に入れない。
信頼性という点においても、コロナ禍での出荷停止や長引くゼロコロナ政策によって、かつてのような大きな魅力は失われた。同時に、最近は中国政府の安全保障への執着により当局の介入姿勢がこれまでになく前面に出ている。魅力の減少と強硬姿勢の強まりという組み合わせは、各国企業の中国評に影響している。