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2024.07.04 09:15

海洋国家日本で進む「ブルーカーボン」活用とは

日本におけるブルーカーボンの将来展望

日本におけるブルーカーボンへの関心と取り組みが加速しています。2021年、枝廣淳子氏は、移住先として選んだ静岡県で「ブルーカーボン.jp」を立ち上げました。

「私は25年ほど前から環境問題に取り組んできましたが、温暖化への対策と、海の豊かさを取り戻すことが非常に重要な課題であると考えています。この2つの課題の両方に効く取り組みが「ブルーカーボン」です。」と枝廣氏。「次世代への環境教育を推進することで、藻場再生とブルーカーボンに関する日本の取り組みを強化することを目指しています」と述べています。

官民連携も進んでいます。2023年末、ENEOSは、産官学連携によるブルーカーボンの大規模創出に向けた構想を発表。港湾空港技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、東京大学と連携するとしています。

このイニシアチブは、100万トン以上のブルーカーボンを大規模創出することを目指しています。この協力関係を通じて、産官学はそれぞれの専門知識を活用し、「ブルーカーボン生態系のCO2吸収源としての利活用」に関する検討を行います。

ブルーカーボンの可能性を最大限に引き出すための課題の克服

こうした取り組みに課題がないわけではありません。長崎大学のグレゴリー・ニシハラ教授は「海藻だけですべての排出量を回収しようとすると、日本の海洋排他的経済水域の10%、約4億3300万ヘクタールを使用する必要がある」と述べています。

また、環境省のデータによると、日本の海草藻場は減少しており、再生はさらに難しくなっています。30年前に85万エーカー強あった海草藻場の面積は、現在20万ヘクタール弱、つまり約50万エーカーのみと推定されています。

New Nature Economy - Nature Risk Rising, World Economic Forum 2020(世界経済フォーラム2020、ニュー・ネイチャー・エコノミー - ネイチャー・リスクの上昇)」で述べられているように、世界の国内総生産の半分以上が自然に中程度または高度に依存しています。こうした現状を踏まえ、止まることなく前進することで、新たなアプローチを生み出していくことが重要です。

世界経済フォーラムは、各国(現在はインドネシアとフィリピン)との「ブルーカーボン・アクション・パートナーシップ」も強化。科学技術開発、投資、地域社会への利益向上を促進しています。

「自然資本をきちんと管理することで融資を受けられる時代になってきている」、「自然を活用することで、経済の流れも良くすることができる」。東北大学大学院の近藤倫生教授が述べる、こうした視点も、前進する上で欠かすことができません。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Naoko Tochibayashi, Communications Lead, Japan, World Economic Forum

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