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2024.04.17

虚偽コンテンツの蔓延、世界最大のリスクに

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デジタルテクノロジーと分断されたメディアのエコシステムが、偽情報の拡散を許しています。偽情報の拡散は、社会全体の信頼の喪失に拍車をかけます。信頼を回復し、健全なメディア環境を維持するには、各国政府、メディア企業、テクノロジー企業、市民社会が連携する必要があります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。


デジタル技術が私たちの生活のほとんどすべての局面に浸透している今、情報の発信はかつてないほど容易かつ瞬時に行われるようになりました。そして、ボタンをクリックするだけで偽情報が世界中に拡散するこの世界において「偽情報の波が私たちの情報エコシステムと民主主義社会を脅かす中、真実をどう守るか」が問われています。

今日、オンライン上で虚偽コンテンツの拡散が蔓延しており、このことが、制度への信頼の低下をグローバルに悪化させています。実際のところ、ニュースを完全に信頼している人はわずか40%に過ぎません。世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2024年版」が強調するように、偽情報は、今後2年間で直面する世界最大のリスクと見なされ、10年後には世界第五のリスクとなるとされています。

偽情報に対処するには、分野を超えた協調的な取り組みが必要です。各国政府、報道機関、ハイテク企業、市民社会が協力して、偽情報の拡散に対する多層的な防衛策を構築しなければなりません。インターネット・ユーザーのメディア情報リテラシーを高め、報道機関の独立性と存続可能性を確保し、テクノロジーを活用して信頼できるジャーナリズムと偽情報を区別することが、偽情報の拡散に対抗するために不可欠です。

スイスのダボスで開催された「第54回世界経済フォーラム年次総会」のセッション「真実を守る(Defending Truth)」においても、これらの重要な行動について議論がなされました。参加者には、欧州委員会のヴィエラ・ヨウロバー副委員長(価値観・透明性担当)、ニューヨーク・タイムズ紙のメレディス・コピット・レビアン社長兼最高経営責任者、メディアを支援する国際NPO、インターニュースのジャンヌ・ブルゴール社長兼最高経営責任者、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のエマ・タッカー編集局長らが名を連ねています。

デジタルの新時代

現在のデジタル時代は、情報へのアクセスやニュースの消費方法に革命をもたらし、断片的でサイロ化されたメディア・エコシステムの台頭に拍車をかけています。これにより、複雑な課題が単純化されすぎる懸念があります。

こうした変化が、視聴者が独立したジャーナリズムの価値を十分に理解することを難しくしています。また、独立した事実に基づくジャーナリズムと党派的な意見の区別が曖昧になり、偽情報の蔓延を許して、不信と分断を助長しています。

「独立したジャーナリズムの価値と重要性について、一般の人々のメディア・リテラシーを高める必要があります。ジャーナリズムとそうでないものを区別することが、いろいろな理由でとても難しくなっているのです」とニューヨーク・タイムズ紙のレビアン氏は、ダボスで開催された年次総会でのセッションで述べています。

ウォール・ストリート・ジャーナルのタッカー氏は「信頼は私たちの最も貴重な資産です。それを手放した瞬間、我々のビジネスモデルは崩壊するでしょう。信頼とは、間違いを正すことでもあります。間違いを犯した時には正直にならなければならないのです」と述べました。

真実の報道への障壁 - コスト、時間、危険

インスタント・コミュニケーションの時代において重要な課題の一つは、偽情報が真実を検証するよりも早く伝わり、混乱と不信の温床を作り出してしまうことです。偽情報のウイルス的な拡散とは異なり、真実を明らかにするプロセスはしばしば時間と手間がかかります。
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文=Jesus Serrano, Global Communications Group, World Economic Forum

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