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2024.04.17 15:15

虚偽コンテンツの蔓延、世界最大のリスクに

督 あかり
「真実は多くの場合、ゆっくりと明らかになります。市民が理解し、誰に何の責任を問うべきかを知る必要があるような、非常に重大な事柄に関する大きな記事のほとんどは、数日、数週間、時には数カ月を要します」と、レビアン氏。#MeToo運動のきっかけとなったハリウッドでの性的暴行疑惑に関するタイムズ紙の数カ月に及ぶ調査を引き合いに出しました。

もう一つの懸念は、紛争地域や権威主義体制下での報道には危険が伴うことです。こうした環境での取材では、ジャーナリストが危険にさらされるため、正確な現場情報を伝えることがより難しくなります。しかし、一般市民には十分な情報が絶対に必要なのです。

「これは非常に大きな課題です」とタッカー氏。「ジャーナリストを派遣できない国もあります。真実を確かめるには目撃証言に頼るしかないため、これは私たち全員の課題です。非常に憂慮すべき傾向です」。

インターニュースのブルゴール氏も、危険地帯で活動するジャーナリストへの懸念を表明し、中東で現在進行中の紛争は「ジャーナリスト保護委員会が追跡してきたジャーナリズムの歴史の中で、最も死者の多い紛争」であると指摘しました。

AIと偽情報の時代における信頼の再構築

世界経済フォーラムの白書「The Principles for the Future of Responsible Media in the Era of AI(AIの時代における責任あるメディアの未来のための原則)」は、メディアの分断化と、非合成コンテンツと見分けがつきにくい生成AIコンテンツの増加が相まって、何を信頼すべきかの判断が難しくなり、メディアは偏向している、あるいは信頼できないと考える人が増えていると指摘しています。その結果、ニュースを受け取る人々は、代替ソースからの偽情報に敏感になっているのです。

ここまで見てきたように、偽情報の時代に信頼を回復し、健全な信頼のエコシステムを維持することは、政府、メディア、テクノロジー企業、市民社会の共同努力を必要とする複雑な課題になっています。真実を守るためには足並みを揃えて、メディア・リテラシーの育成、質の高い報道機関の独立性と持続可能性の強化、技術イノベーションへの開放性とAIの責任ある導入などに重点を置くべきでしょう。

現在、偽情報に対抗するあらゆる取り組みが進められています。欧州連合(EU)は、近頃、デジタルサービス法を採択しました。この法律は、オンライン上の有害なコンテンツを狙い撃ちするもので、透明性、公共空間におけるAIの使用、リスクの高いシステムなどの分野を対象とした包括的なAI規制です。

一方、世界経済フォーラムの「デジタル・セーフティ・グローバル・コアリション(Global Coalition for Digital Safety)」は、メディア・リテラシーの役割を探り、偽情報の拡散に対抗する社会全体のアプローチを育成することで、この課題に積極的に立ち向かっています。

偽情報への取り組みは、一見、困難なミッションのように思えるかもしれません。しかし、真実を守るためにはこうした集団的な努力が不可欠なのです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Jesus Serrano, Global Communications Group, World Economic Forum

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