気候・環境

2024.06.13 09:15

今知るべき「砂漠化」問題 ヨーロッパのあの国も

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気候変動、森林伐採、過放牧、持続不可能な農法などが要因となり、世界の乾燥地は砂漠化の一途を辿っています。

生物多様性、水域、植生の喪失とともに、生産性の高い土壌の劣化は人間の生活にも影響を及ぼし、貧困、食料不足、水不足、健康状態の悪化につながっています。

しかし、2024年には世界経済フォーラムの特別会合やCOP16など、砂漠化への取り組みに焦点を当てた一連の会合が開催され、砂漠化との闘いにとって重要な年になるでしょう。

砂漠といえば、中東や北アフリカ、中央アジアといった地域が思い浮かぶかもしれません。しかし、気候変動にともなう砂漠化の進行は地球全体でますます広範囲に及び、その面積は着実に拡大しています。126の締約国による国連の2022年国別報告書で発表された最新データによると、現在、土地の15.5%が劣化。この数年で4%増加しています。

こうした中、2024年にサウジアラビアで開催される2つの大規模な会合が、状況を動かす力になると期待されています。4月28から29日にかけて開催される、世界経済フォーラムの「開発に向けたグローバル・コラボレーション、成長、およびエネルギー」特別会合と、12月に開催される国連砂漠化対処条約(UNCCD)第16回締約国会議(COP16)では、この深刻化する課題への取り組みが大きな焦点となります。UNCCDは、国連の気候変動枠組条約、生物多様性条約と並ぶリオ3条約のひとつです。

砂漠化は地球と人にとってどのような意味を持ち、どのようにすれば砂漠化を緩和できるのでしょうか。

砂漠化とその原因

砂漠化とは土地の劣化の一種で、すでに比較的乾燥している土地がますます乾燥し、生産性の高い土壌が劣化し、水域、生物多様性、植生が失われることです。これは、気候変動、森林伐採、過放牧、持続不可能な農法など、さまざまな要因によって引き起こされます。

課題の規模は、サハラ砂漠、カラハリ砂漠、ゴビ砂漠のような砂漠をはるかに超えるものです。UNCCDによれば、毎年1億ヘクタールの生産可能な土地が劣化。干ばつは当たり前になりつつあり、2050年までに人口の4分の3が水不足に直面すると予想されています。また、Earth.orgによれば現在、約20億人が砂漠化の最も進行しやすい乾燥地帯に暮らしています。最も影響を受けている地域は、アフリカと東・中央アジアです。

砂漠化の影響を最も受けやすい場所

世界経済フォーラムのレポート「Quantifying the Impact of Climate Change on Human Health 2024(気候変動が人間の健康に与える影響の定量化 2024年版)」によると、アフリカでは、すでに約4000万人が深刻な干ばつ状態のもとで生活しています。

また、Earth.orgによると、アジアでは、中国、ウズベキスタン、キルギスタンをはじめとする国々で気温が急上昇。これらの地域の一部は1980年代から砂漠気候に分類されていましたが、砂漠化が進み、近年の気温上昇と雨の多さの一因となっています。一方、山間部では雪不足によって氷河が徐々に消滅し、人と農業の両方に影響を及ぼす水の安全保障が脅かされています。

しかし、土地の劣化はより温暖な地域にも影響を及ぼしているのです。同レポートでは、米国統合干ばつ情報システム(National Integrated Drought Information System)の統計を引用し、米国ではアラスカとハワイを除く48州のうち40%近くが干ばつに直面していると述べています。
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文=Andrea Willige Senior Writer, Forum Agenda

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