ビジネス

2024.06.25 17:45

シャープ片山元社長の「新サプライチェーン論」。負け組日本にこそ「勝機」あり


「消費者ニーズが多様化するなか、少品種大量生産から多品種少量生産へのシフトは不可避です。世界で労働人口が減少し、地政学的リスクも顕在化している。そうした変化に対して製造業が取りうる解決策は、高性能ロボットの活用による省人化と、生産能力を分散化、高速化する消費地生産です。変化に対して、日本企業はいかにライバルに先んじて策を講じるか。ポイントは、弱点をうまく活用することです」

片山は背景として、日本企業は韓国や中国と比べて投資できなかった分、生産能力は限定的ではあるものの、減価償却の終わった古い工場が多く、刷新しやすい状況にあること。そして、日本には自律的に動く知能ロボットの共通OSを開発し、工場の1つのラインで多品種少量生産を可能にするスタートアップが出現していることなどに触れ、世界有数の労働人口減少国として、IoTやAI技術が生産現場にようやく実装され始めている現状について述べた。

「古い生産設備を刷新して、最新のテクノロジーが実装された工場を、消費地に近いところに建設してリードタイムを短くする。日本の製造業が抱える従来のネガティブ要素は、経営者の意思決定次第でポジティブに転換することが可能な状態にあります」

もちろん、インダストリー4.0を早くから打ち出しているドイツをはじめ、今は巨大な生産設備を抱える韓国や中国も傍観しているわけではない。

「決断のタイミングは今なのです」
日本の製造業の栄枯盛衰を身をもって経験してきた彼は、そう言うのだ。

Forbes JAPAN 8月号』本誌では、残り5つの「日本の製造業がはまった罠」とは何かをはじめ、サプライチェーンマネジメントの具体的な解決策として、水道パイプを分断・分散化して同時並行で進めるという案や、製造工程を俯瞰して労働力、生産設備・拠点、資金を分散させてパイプの凹凸をならすことなどを示している。



片山幹雄◎東大卒業後、シャープ入社。液晶事業本部長、同事業部取締役等を歴任、太陽電池や液晶の研究開発に尽力。2007年、同社最年少49歳で代表取締役社長に。14年にシャープ退社、日本電産 副会長最高技術責任者(CTO)就任。22年同社を退社し、Kconcept立ち上げた。

編集=大柏真佑実 、 写真=浅田 創

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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