1. 売り上げも利益も小さい、典型的な日本のメーカー型
まずは営業と生産力の大きさに対して、市場ニーズを察知するマーケティングや商品設計、販売網、アフターケアなどのサービスが弱いタイプ。「日本企業の特徴として、生産部門と営業部門がかなり頑張るんです。しかし、属人的なひと昔前のマーケティングや企画をしているため、時間がかかるし、プロダクトアウトになりがちで、しばしば市場のニーズに合わない商品を送り出してしまう。
そして、生産力を十分に有していてもグローバルな販売網が脆弱なため、商品の売り先を確保できません。その結果、工場の稼働率が下がるか、出荷を待つ在庫の山が積み上がるかで、売り上げも利益も増えずに小さいのです」
2. 生産販売のリードタイムが長く、利幅が小さい
次に営業力に加え、生産力と販売力、サービス部門も強いが、利益が非常に小さいタイプ。原因としてはタイプ1.と同じく、マーケティング力や企画力が弱いことに加え、海外工場を持ちすぎている問題があるという。その海外工場の位置も、日本企業の敗因になったと片山は分析する。
「多くの総合電機メーカーは生産と販売のギャップを埋めるため、グローバルに支社を設置しました。大消費地である北米や欧州に細かく拠点を設け、生産力に見合った販売体制を整えたのです。ところが、海外工場の多くを製造コストの低さから中国や東南アジアに設けたため、消費地である北米や欧州までの輸送時間が長くなってしまい、上手くいきませんでした」
例えば、東南アジアの工場から欧州の販売拠点まで白物家電を運ぼうとすると、船便で南アフリカの喜望峰を経由し、4週間近くかかる。その分、リードタイムが伸びて販売機会を損失し、値下げのリスクが高まる。結果、一定の売り上げは立つものの、利幅が小さくなってしまうのだ。
「売上高営業利益率が低い製造業の企業は、このパターンに陥っているケースが大半です」と片山は言い、このタイプはキャッシュコンバージョンサイクル(CCC:原材料を仕入れてから現金収入を得るまでの日数)も長くなるため、資金繰りも悪化しやすいビジネスモデルだと指摘した。
3. SCMを経営の中心に。高利益率のバランス型
続けて片山があげたのが、マーケティング力と企画力が強く、営業、設計、生産、販売は同じパイプの幅で、詰まりがない3つ目のタイプだ。売り上げは小さいが、ロスが少ないために利益率が高い。米国に本社を置くスマートフォンやタブレット端末を手がける多国籍企業などが該当するという。
「ある多国籍メーカーではソーシング(調達活動)出身の人材を経営のトップに据え、サプライチェーンマネジメントのチームに、通信やディスプレイなどといった技術の専門家をはじめ、財務や法務などさまざまな領域の専門家を取引先などから引き抜いてきて入れています。サプライチェーンマネジメントを経営の本筋におき、リソースを最適配置しています」
例えば、生産を世界中にあるEMS(製造受託企業)に外注することで、マーケティングや企画といった自社の得意分野にリソースを集中投下し、経営の効率化につなげたほか、サプライチェーンマネジメントのチームが、生産以降の工程を中心に委託先を徹底管理している。
「日本の総合電気メーカーで経営の中心にいる人物は、営業出身者など事業側の人間がほとんどでしょう。そこが大きな違いです」