欧州

2024.06.22 10:00

チャシウヤール攻防戦、ウクライナ軍が近郊で逆襲 運河の橋はロシア兵の「キルゾーン」に

この間、チャシウヤール正面でも激しい戦闘が続いていた。ただ、ウクライナ軍の守備隊は数週間ぶりに、火力でロシア側に大きく劣らない状態になっていた。また、防御する側としては、攻撃してくる側のロシア軍より有利だった。ウクライナ側がチャシウヤールの高台の塹壕に潜み、待ち構えることができるのに対して、ロシア側は自軍の比較的安全な塹壕や掩体から出て、低地の開けた場所を越えていかなくてはならなかった。

運河地区の周辺には森林があり、ロシア軍の部隊はそこに隠れれば、常時飛んでいるウクライナ側のドローンからある程度身を守ることができる。しかし、運河を越えるためには森林を抜け出て、2本ある陸橋のどちらかを急いで渡らなくてはいけない。

ウクライナ側はこれらの陸橋で、攻撃してくるロシア兵をドローンや大砲で大量に殺害している。ロシア兵が長く幅の広い水道管に逃げ込んだときに、その水道管に空いた穴にドローンから擲弾を投下したこともあった。

6月3日にあったある攻撃は典型的なものだ。ロシア軍のMT-LB装甲牽引車がチャシウヤールの北の運河をどうにか越えてきて、歩兵分隊を降ろす。だが、それは無駄に終わる。ウクライナ側の監視ドローンが上空から見守るなか、FPVドローンが突っ込んで歩兵たちを切り刻んだ。

MT-LBは慌てて走り去るが、どういうわけか、ウクライナ側が支配する東方向へさらに向かっていった。このあと生き延びられた確率はゼロに近いだろう。米首都ワシントンにあるシンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)のアナリスト、ジョン・ハーディーは「乗員は東西を失ってしまったのではないか」と推測している

たとえ今後、ロシア側が再び部隊を集結させ、何千人もの人員の犠牲と引き換えにチャシウヤールを獲得できたとしても、それもまた「ピュロスの勝利」、つまり自滅的な勝利になるだろう。フロンテリジェンス・インサイトは5月、「戦場の状況は、ロシア軍がすでに突撃によって多大な犠牲を強いられていることを示している」と指摘していた。

そのうえで、こうした突撃を繰り返す結果、ロシア軍はチャシウヤール占領後にさらに前進しようとした場合に必要になる「何十両もの車両や空挺部隊を失っている」と述べている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事