2024.06.20 10:15

20代で「消滅可能性都市」奥尻島に移住。 観光客を呼び10人の移住者を生んだ方法

シェアハウスをオープン

外崎さんはコロナ禍で北海道知事認定アウトドアガイド資格の取得を進め、現在はゲストハウスを運営しながら、島のガイドツアーやSUPなどのアクティビティ事業も展開している。

奥尻島は北海道では珍しく、エゾシカ、キタキツネ、ヒグマ、マムシがいないので、ブナ林のガイドツアーでも安心して歩くことができる。マダニもいないので、真夜中の森をのんびり裸足で歩くことも可能だ。また、透明度が高い夏の海を生かしたSUPや、自然を体感できるファットバイクといったアクティビティも実施する。

また、ゲストハウスの隣にある元商店の空き家を購入し、2021年に多目的シェアハウスcocokara をオープン。2階はシェアハウス、1階は、コワーキングスペースやミーティングルームとして使用できる多目的広場がある。住む場所をつくったことで、観光から移住への流れを生み出した。

人口減少が深刻な問題となっている奥尻島だが、ゲストハウス、シェアハウス、そして外崎さん自身の存在があることで、島外からの移住の敷居が格段に下がっている。外崎さんが移住者と地元住民のハブになった結果、関係者を除いて約10人が移住を決めたという。

ブナ林のガイドツアーをする外崎さん

島内にも広がる活動

外崎さんの活動は、島外への発信や受け入れだけではなく、島民に対しても広がっている。教員経験のある外崎さんは、その経験を活かして島内の学校で「奥尻学」の授業を行っている。「奥尻学」は、外崎さん自身が感じている島の魅力を、改めて地元の子どもたちに伝える授業だ。「子どもの中には、島には何もないと思ってしまっている子もいる。”幸せになるには外にいかないといけない”という考えになるのではなく、育った島に誇りを持ってもらいたい」と話す。

さらに、2023年には、海ごみをアップサイクルしたお土産品のコースターを開発した。ゲストハウス「imacoco」は海が目の前にあるが、そこにはペットボトルやプラスチック容器など海洋プラスチックごみが際限なく漂流している。それらは焼却処分することができないため、アップサイクルしてコースターにしようと考えた。

そこで、大学生ボランティアとともにゴミを回収・洗浄し、プラスチックの漂流ゴミを15cm角に裁断して色別に仕分けし出荷。自社でリスクをとる形でコースターを制作している。利益を上げることより漂流するゴミの事実とこの現状を多くの人に届けたいと思っているのだろう。
海洋プラスチックごみを材料にしたコースターブランドbuoy(ブイ)

「奥尻島に感謝している。とても幸せな暮らしをしている。この生活を毎日するためにできることをやっていくし、維持するためにやらなければならないことも多い」と話す外崎さん。

今後は企業向けのリトリートツアーなどを展開しようと考え、マインドフルネスなどを勉強し資格を取得した。

人口20人ほどの離島の限界集落に移住し、交流人口、移住施策、雇用、地域教育、ごみ問題あらゆる側面でできる方法を考え、奥尻島の課題解決に尽力している姿にはとても感銘を受ける。すべては外崎さんが移住し、豊かな生活を持続するために島でできることを一つずつ積み上げてきた結果なのだろう。こうした地域全体を主語にして地域で活躍していけるような人たちが増えると、地方の未来も少しずつ明るくなるだろう。

取材協力、写真提供=外崎雄斗

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