欧州

2024.06.06 11:30

ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシア軍の装甲車狩りにいそしむ 歩兵ごと粉砕

米陸軍のM2ブラッドレー歩兵戦闘車。2024年5月、チェコ・リババ(TLF / Shutterstock.com)

ロシアがウクライナで拡大して2年4カ月目に入る戦争で、ロシア軍は兵士を戦場に送り込む2つの装甲車両、装甲兵員輸送車(APC)と歩兵戦闘車(IFV)も大量に失ってきた。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」が視覚的に確認しているだけで、撃破数は約4300両にのぼる。毎月160両ほど撃破されている計算だ。

ウクライナ軍のAPCとIFVの損失ははるかに少なく、撃破された数は合計で1200両ほどにとどまる。

ロシア軍のAPCとIFVの損失は5月に急増した。この戦争の装備の損害を独自に集計しているOSINTアナリストのアンドルー・パーペチュアによれば、撃破された数は計288両に達した。パーペチュアは「これはあくまで、わたしたちが見て数えたものだけだ」と強調している。

なぜそうなったのかは明らかだ。ウクライナの1000kmにおよぶ戦線のなかでもとくに激しい戦闘が繰り広げられている東部のアウジーウカ正面で、ウクライナ軍が優れた車両を用いる一方、ロシア軍の車両は劣化しているからだ。両者が相まみえると、ロシア側の車両は手ひどくやられている。

この1カ月あまりの間にソーシャルメディアで共有された2つの動画は、両軍の車両のそうした優劣をまざまざと示している。どちらの場合も、ウクライナ軍の米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車がロシア軍の装甲兵員輸送車と対決し、破壊している。ロシア側は2つの小競り合いで計数十人が戦死した可能性がある。

ひとつめの動画は、5月2日かその少し前に行われた戦闘の様子を映している。長期保管施設から引っ張り出され、自爆型のドローン(無人機)対策のケージ装甲を取り付けたロシア軍の老朽化したMT-LB装甲牽引車の一両が、車上に歩兵6人ほどを乗せて、アウジーウカ西方のウクライナ側の陣地に向けて走ってくる。1990年代に製造され、米国から300両あまり供与されたウクライナ軍のM2の一両がそれを迎え撃つ。

これは不公平な戦いだった。重量約12tの装軌車両であるMT-LBは元来、支援車両として設計されているので、装甲は薄く、軽武装だ。兵士を戦場に直接運び込むという用途は想定されていなかった。しかし、より重量のあるBMP歩兵戦闘車を数千両失ったロシア軍は、MT-LBを前線でAPCとして使わざるを得なくなっている。

対して重量約30tの装軌車両であるM-2は直接戦闘用に設計されており、精確に高速で射撃できる25mm機関砲や、乗員や兵員を守るのに役立つ装甲を装備する。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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