こうした動きについてゼミ生と議論をすると「有難いし役に立つ。中高生の時に基礎を学びたかった。でも入試に出ないから」。まさに問題の核心を突いていた。大学受験を最終目的に据えている若者たちにとって、入試に出ない分野を勉強することは単なる時間の無駄である。金融だ、投資だ、といっても試験に無関係のものに勢力を傾けることは不合理なのだ。
そうであれば、入試に出るようにすればよい。金融投資教育の関係者は、文部科学省に対して教科書や学習指導要領に金融・投資を盛り込んでほしいと要望した。最近ようやく、その一部が社会科系科目で実現したがまだまだ不十分である。例えば、数学で金融計算を積極的に取り入れたり、歴史を金融面からとらえた試験問題を頻出させたりする工夫が必要だと思う。
NISA(少額投資非課税制度)が拡充され、若い人たちを中心に投資ブームが到来していると聞く。だが、パッシブ投資が中心だ。よりアクティブかつ健全なリスクマネー投資を実現するために、あらためて若年層への金融投資教育の必要性を痛感する。その機会は今である。黄砂に悩まされながら感じた。中高生に人生の必修科目として金融投資を勉強してもらうように仕向けなければならない。そうでないと日本の成長資金は「百年河清を俟つ」ことになる。いまだ、個人金融資産の割合は大きく変化したとは言えない状況なのである。
川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。