短期的な視点で考えれば、米国が「緑水01」に代わる効率的で低コストの船舶を建造するのは困難だろう。「緑水01」は標準的な20フィートコンテナサイズのバッテリーボックスを搭載し、充電が切れたらバッテリーを交換する方法を採用することで、既存のグリーンテクノロジーを活用しつつ、これまで長く電動船舶の航続距離を制限してきたバッテリー寿命の問題を解消した。
米国市場で大きなシェアを占めるデンマークの海運大手マースクは電動化をまったく検討しておらず、グリーンメタノールなどの代替燃料に頼っているが、数年後にはこれも排出税の対象になるかもしれない。一方、米海運最大手マトソンは一部船舶を省エネ型に改良する計画を発表しており、電動船の建造を手掛ける米造船会社オールアメリカンマリンの新しい水素燃料電池は非常に有望だ。それでも、いずれも中国に大きく遅れをとっている。
平たく言って、中国は電動海運技術の分野で米国の何年も先を行っているのだ。確かにコスコは国有企業で、中国政府から手厚い補助金を得ており、新技術をかなり迅速に実装できるという利点を有する。米国はコスコに真っ向勝負を挑むために産業政策を利用することはできないし、そうするべきでもない。しかし、研究開発を奨励し、米国企業が中国の不公正な貿易慣行に対抗して先端技術を輸出するのを支援するには、エネルギー省と国防高等研究計画局(DARPA)が投資と支援を拡大する必要がある。
米国政府が安全保障上のニーズの高まりに対応するため海運業界の刷新を図ったとしても、米国が中国に打ち勝つには大きな障壁が立ちはだかる。グリーンテック格差など、政府がコントロールできない問題もあるが、ジョーンズ法のように自らつくり出した障害もある。