Bリーグ・下位常連の三遠を地区優勝に導いた、ハーバード大との連携「データ活用術」とは

SAN-EN NEOPHOENIX #5 大浦颯太選手


ハーバード大教授が植え付けたプロジェクトの哲学と2つのフレームワークとは

このプロジェクトはクラブ外かつ海外のメンバーと共に、勝利という目標に向かって成果を出していくという、Bリーグでは初の取組みです。
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それゆえに「プロジェクトをどのようにマネジメントしていくか?」が非常に重要な課題であり、我々はJudd氏の考えを基に大きな哲学を掲げ、その哲学に沿った2つのプロセスフレームワークを活用することにしました。

プロジェクトの哲学としているのは、アウトプットが「ステークホルダー(受け手=コーチ・選手・GM)にとって有益なもの」になり得るかを常に考えることと、問題をWhyの部分まで掘り下げて「Issue(真に解決すべき課題)」を特定することです。

一見当たり前のことのようにも思えますが、問題を深く考えて行けば行くほど、アウトプットした時に受け手にとって有益でなくなることがよくあり、逆に受け手への有益性を考えすぎると、表面的になりすぎて本質的なIssueに辿り着けないことがあります。トレードオフになりがちな有益性と本質を常に意識してコントロールすることで、プロジェクトとしての成果をあげていくことを追求しています。
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三遠ネオフェニックスとハーバード大学の連携データ分析プロジェクトの「哲学」

そして、実際のマネジメントに活用している2つのフレームワークが「成功循環モデル」(ダニエル・キム)と「アジャイル開発」の応用です。

成功循環モデルは簡単に言うと「行動から始めるのではなく、関係性を高めることから始めよう」というフレームワークです。行動から始めてしまうと、結果が出なかった時に関係性が悪くなり、悪循環に陥ってしまう。関係性を高めることから始めることで、思考と行動が一致し、結果が出ても出なくても次のサイクルに良い形で入ることができるのです。

日本とアメリカという地理的にも文化的にも大きく離れたメンバー同士でプロジェクトを行なうからこそ、このフレームワークを最大限に活用しています。また、関係性の質を高めるためのミーティングにおける場づくりやJudd氏の来日アレンジなどを秦氏が中心となって積極的に実施しています。

MIT(米マサチューセッツ工科大学)組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱した「成功循環モデル」をもとに筆者が作成

MIT(米マサチューセッツ工科大学)組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱した「成功循環モデル」をもとに筆者が作成


次に、1回で大きな成果を出すことを目指すウォーターフォール型ではなく、PDCAを何周も回していく「アジャイル開発」型を応用することを決めました。

これはシーズン60試合というBリーグの試合数の多さと、「準備→挑戦→フィードバックを活用した改善」を重視する大野HCのコーチング哲学に合わせて採用しました。

また、今シーズン途中からコーチが1名、プロジェクトメンバーに加わりました。これは課題を発見していく過程において、解決する立場の人が必要になったためです。このように、体制自体にも少しずつ変更を加えながらプロジェクトを運営しています。

ステークホルダーへの有益性を最重視するJudd氏の姿勢と、大野HCの向上心と探究心、そして学び得たものからチームにとって必要なものを見極める判断力や応用力により、このプロジェクトのアウトプットが最大限にチーム強化に活かされていると感じています。
SAN-EN NEOPHOENIX #0 サーディ・ラベナ選手

SAN-EN NEOPHOENIX #0 サーディ・ラベナ選手


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文=木村和希 画像=SAN-EN NEOPHOENIX 編集=宇藤智子

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