しかし、米国の独占禁止法では、支配的なシェアや独占そのものは違法とせず、反競争的な行為を禁じている。つまり、アクソンを訴えている原告は、この点を証明する必要がある。
法律の専門家たちは、原告に勝算があると考えているようだ。ニューヨーク市に本拠を置く擁護団体Surveillance Technology Oversight Projectの創設者で、独占禁止法を専門とする弁護士だったアルバート・フォックス・カーンは、「アクソンは、非常に深刻な状況に置かれているように見える」と話す。
バッファロー大学の法学部教授で、独占禁止法の専門家であるクリスティン・バーソレミューも同意見で、アクソン製品の急激な値上げは驚くべきものだと指摘する。
「反競争的な行為が立証された場合、訴状に記載されている数字はアクソンにとって危険領域だと言える」と彼女は述べ、原告の主張が通れば同社は莫大な経済的ダメージを受ける可能性があると指摘する。独占禁止法では、原告は賠償額を3倍まで増額することができる。この訴訟では、原告側による過払い額は明らかにされていないが、アクソン製品の価格が急騰していることから、かなりの金額になる可能性がある。
しかし、判決の行方はまだ分からない。アクソンは、過去の裁判で勝訴したことがあり、過酷な争いになる可能性もある。2020年1月に、米連邦取引委員会(FTC)はアクソンによるヴィーブの買収が公正な競争力を阻害する恐れがあるとして、同社を提訴した。FTCは当時のプレスリリースで次のように述べている。「当委員会は、警察官が職務に必要な最先端の製品を入手し、市場競争によってもたらされた低価格と革新的な製品から利益を得られるようにするため、行動を起こした」
これに対し、アクソンはFTCを提訴した。法廷闘争は3年以上続いたが、最終的にはFTCが勝訴しても費用と時間がかかりすぎるとして訴えを取り下げた。
アクソンのピーターソンは、FTCの撤退を同社の勝利とアピールし、「根本的な仮定が誤りであることが証明された」と主張した。しかし、ヴィーブの買収が反競争的だったか否かについて司法は判断を下しておらず、今回ボルチモアとオーガスタ、ハウエルが改めてこの問題を裁判で争おうとしている。そして、これらの都市は、アクソンが抱える数万もの顧客の3つに過ぎないのだ。
(forbes.com 原文)