このいたちごっこは、特にウクライナが国内の防衛産業を大幅に拡大し、より高度な自律性など、ますます先進的な能力を備えたドローンを配備するようになったことで拍車が掛かっている。対するロシアは従来のドローン対策からやや逸脱し、代わりにウクライナのドローンの威力を最小限に抑えるためにかなり単純でこれまでにないアプローチを取っている。
従来のドローン対策は、動的なものか、そうでないものの2つに分類される。動的なソリューションは通常、地対空ミサイルや機関銃などを用いた撃墜だ。一方、静的なアプローチでは、ジャミング、スプーフィング、ハッキングなどの電子戦技術を用いてドローンの制御信号や搭載ナビシステムを妨害する。
ウクライナがこれらの対策を併用しているのに対し、ロシアは主に静的なソリューションに依存している。実際、ロシア軍はドローンに危害を加えられる数々の電子戦装備を持っており、昨年5月には1万機以上のウクライナ軍のドローンを無力化した。
戦争が進むにつれ、ウクライナは防衛産業基盤の拡大によりかなり優位に立っている。商業的な技術と専門知識を活用して軍事用の新型ドローンを迅速に開発・配備することができる。新型ドローンには新機能と向上が図られた自律性が搭載され、ロシアのドローン対策に対抗できるよう強化されていることが多い。
ウクライナの防衛関連企業が技術の進歩のスピードに合わせて動いているのに対し、ロシアの防衛産業基盤は新しい技術の取り込みに柔軟でなく、動きが鈍い。こうした問題とウクライナのドローン開発スピードを考慮し、ロシアはウクライナのドローンに対抗するために、ローテクでこれまでにない対策を取ることにした。これらの策は電子戦システムほど高度ではないものの、効果的であることが証明されつつある。
例えば、ロシアは石油精製所など重要な施設をウクライナのドローン攻撃から守るためにドローン侵入を阻むフェンスを導入した。大きな金属製のフェンスは建物全体を覆うことができ、金属の杭を地面に打ち込んで固定された係船索(船舶の係留に用いられる太い綱)で支えられている。ロシアでは、標的となり得るあらゆるものを守ることができる防空物資が不足しており、また既存のシステムの多くがウクライナのドローンに対して効果がないことが明らかになっているため、こうしたフェンスは貴重なものとなっている。
さらに、ロシアの複数の企業が現在、ドローン対策のフェンスを提供し、フェンスはドローンの侵入を阻止する上で大きな効果を発揮している。実際、ドローンがフェンスを検知するのは難しく、衝突して墜落することが多い。検知できたとしても、目的の標的に到達することはできない。