筆者は宮城県で精密加工業を営む創業71年の中小企業の3代目なのだが、2015年に家業を継ぐ際に、事業承継とはそもそも会社の何を継ぐのか、事業の発展に最も大切なものは何かなどを深く考えた。そのとき自分なりに出した答えは組織風土・カルチャーだった。
当社はもともと会議室で行う会議があまりなく、あちこちで立ち話程度の雑談でいろんなことが決まることが多く、その自由な社風が強さの源泉と感じたので、思い切って社内の役職や上下関係を廃止して意図的に話しやすい雰囲気を作り、対話や雑談の機会を増やしたところ、以後業績は向上し革新的技術創出ができる体質になった。本稿もそんな筆者のバックグラウンドから、組織カルチャーをテーマに選んだ。
事業承継を機に「コーチング」学ぶ AIコーチ登場に驚き
事業承継という大きな節目において決断をして経営方針を立てるのに役に立ったのがコーチングだ。エグゼクティブ・コーチング・ファームのコーチ・エイが提供しているDCD(Driving Corporate Dynamism)というプログラムで、初めてコーチとの対話を経験し自分自身もコーチングを学んだ。中小企業の社長職は雑務も含めていろんな仕事があるが、筆者の場合は、社員との対話を最も大切にしている。全社員との1on1での対話は社員の可能性の発掘や成長支援に役立っている。コーチ側の自分にも多くの学びや気づきがもたらされる機会でもあり、社長のコーチングスキルが自社の未来を左右する可能性が高いとすら思っていてスキルアップにも努めている。人と人の対話こそがコーチングと思っていた筆者にとって、あのコーチ・エイがAIコーチングをリリースというのは衝撃的なニュースだ。そこで、国内および、米国をはじめとした世界5拠点でコーチングを提供し、組織変革を実現するコーチ・エイの鈴木義幸社長にお話を聞いた。
「当社はこれまで主に大企業のエグゼクティブ層や経営層を中心にサービスを提供しており多くの組織の改革をサポートしてきました。トップが変わると組織が変わる、ということは赤羽さんも実感している通りですが、組織が大きくなればなるほど上司だけではなくて、組織に所属する多くの人がコーチングを理解することが重要になります。クライアント先のポジティブな変化を多く見るうちに、この変化をより多くの方に体験してほしいという想いは強くなっていました」と鈴木社長は語る。そしてこう続けた。