さらに鈴木社長によると、AIコーチには以下のような利点があるそうだ。
企業全体の組織課題に合わせたコーチングを、従業員数にかかわらず、組織全体に提供できる。 人が行うコーチには躊躇しがちなテーマについても、対話の機会を提供できる。日々のセッションやリフレクションで、リアルタイムに思考の整理をサポートできる。 匿名化された膨大なコーチングデータを、継続的な企業課題のレポートとして提供できる。
テクノ不安から出てきた「問い」 リーダーの条件とは
Techno-anxiety(テクノ不安)という言葉がある通り、新しい技術の導入に不安や警戒を感じるのはふつうの反応であるし、ある意味健全な反応でもある。筆者自身もテクノロジーの進化に遅れたくはないものの、なんでもAI化の波には慎重でありたいとの思いもあり、戸惑いを感じる。さて、ここで「自分がコーチングを活用する目的は何か、その先にどのような姿になりたいのか」という問いが自分の中で湧き上がってきた。そこで視点を変えるために、コーチングのプロである鈴木社長に3つの問いを投げかけた。
──リーダーの条件は何だと思いますか。
「高い解像度で未来を見て、目標達成に向けて周りを巻き込み行動する人。様々な環境の変化に対して能動的に働きかけることができる人」──グローバル人材の条件は何だと思いますか。
「全く違う前提を持った他者と出会い、自分の前提と相手の前提を理解し分かり合う、そのための躊躇と戸惑いを乗り越えることのできる人。私たちはそれぞれ社会の中で生きているのでそれぞれ異なる前提にある意味縛られている、グローバル社会においてはそのような社会的バックグラウンドの異なる人との相互理解が大切」──ずばり、コーチングとは?
「目標を達成するために対話を通じて必要なものの見方、とらえ方を手にするプロセス」AIコーチは私たちの内側から未知の可能性を掘り起こすかもしれない。実際に行動を起こし自らを変革するのは自分でしかない。コーチが人かAIか、が重要なのではなく重要なのはその質であり問われる体験だ。
鈴木社長へのインタビューではAIの活用だけでなく、哲学や宗教、世界の歴史や文化などにも話は及び、知性と教養にあふれて時間を忘れる楽しいひと時だった。筆者が沼っている韓流ドラマには主人公が時空を移動するタイムスリップファンタジーというジャンルがあるのだが、鈴木社長に抱いた印象はまさにそれだ。この人は過去と未来の両方を見てきた人なのではないかと感じた。世界と未来を高解像度で見渡すグローバルリーダーを間近で見つつ、自分のなりたい姿も少し具体化してきたような気がする。