「日本中、世界中の人に対話・コーチングの価値を届けたいという当社のパーパス実現のためには人に加えて、何らかのテクノロジーの活用が必要という認識はありました。一方でこれもまた赤羽さんが実感している通り、コーチ側のスキルも重要です。コーチングで成果を上げるには高いスキルを持ったコーチが必要です。当社には約130人の人材がコーチとして在籍し高品質なコーチングを提供していますが、人によるコーチングを機械によるコーチングと融合することで両サービスの効果を最大化し、かつてない規模とスピードで組織変革を実現することができると考えています」(鈴木義幸社長)
ChatGPT登場後に一変 AIコーチが教えてくれること
鈴木社長は10年以上前から様々な可能性を試し、情報収集を続けていたそうだ。AI業界は紀元前と後のようにChatGPT誕生前と後で分けられると思う。以前にもAIとの対話アプリはあったものの到底深い対話をできる域ではなかった。ところが2022年のChatGPT登場後は状況が一変した。一気にこれは使えるという感触を得た。鈴木社長は2023年のダボス会議でフィンランドのAIコーチング開発・提供企業と出会い、日本語版の共同開発をスタートした。
ChatGPTに問えばだいたい「答え」をくれて「知識」がもたらされるが、AIコーチが私たちユーザーにくれるのは「問い」であり、もたらされるのは「行動変化」だ。
「問い」──人は無意識のうちに四六時中自分自身に問いかけている。朝起きた瞬間から、今日の天気は? 何を着ようか?次は何をしようか? 朝食は何を食べよう? など、これら内から出てくる問いに対していちいち答えはしないが、私たちは行動を起こす。
例えば今日の天気は?と漠然とした質問だとまずカーテンを開けるだろう。今日の気温は?という問いであれば窓も開けるかもしれない。さらに問いが、今日の外出先での昼間の天気は?であればスマホかテレビで天気予報を見るだろう。問いの種類が変われば行動が変わる。
ビジネスの現場でも私たちは連続的に無意識/意識的な問いと行動を繰り返している。問いによって新たな視点や気づきを得て、それが行動変化をもたらす。問いの質が変われば行動の質も変わる。この繰り返しによって自己実現や組織変革が達成され、カルチャーが醸成されていく。こうしてコーチングを考えると、問う役割が人ではなくAIに代わっても、問われることの価値は担保されそうだ。