衣服は糸を作る、染色する、生地にするなど細分化された専門領域が複雑に組み合わさって出来上がっているものです。本来であれば糸を作るところから始めて全体像を意識していくべきなのが、今までは分業が進みすぎていて他の工程が見えづらくなっていました。専門家が用意した糸、布をベースに絵を描いて途中から足していくことしかできていなかった。
これから新しいものを作る時には、誰かが俯瞰していかないといけないと考えています。なので、私は全体像を意識してものづくりができるような新たな仕組みを作っていきたいと考えています。ものづくりを俯瞰して全体を見ることにより、まだまだ私たちが発見できてない新しい素材ができるかもしれないし、服作りの新しい方法も見つかるかもしれない。快適性・生産性・多くの人が買える価格で提供することを忘れずに、旅する気持ちで世界中の多様な人々に出会い、新たな仲間とものづくりをしていくことが客観性を保ち全貌を捉えるためにも大事だと考えます。
ファッションの世界は転換期です。サステナビリティーが叫ばれているけどそれだけではないものを探っていくことをデザイナーとして問われている気がしています。すぐに答えは出なくても考え続けるのが大事で、考え続けるためにも旅をすることも必要だと考えております。物理的であり、思考的でもある旅です。旅をする中で出会った点と点を結ぶことにより新たな可能性に出会えると考え ます。Synfluxさんとの取り組みも旅の途中の嬉しい出会いでした。
イッセイ ミヤケとしても社内のジェネレーションが新しく変わっていく中で、テクノロジーの捉え方も大きく進化し、これまでとは違う可能性を感じています。今はすごく面白い時代だと思います。
そして、我々らしさという点では、日本人はマニアックで、純粋にクリエイティブを突き詰める方が多いので、ヨーロッパの伝統的な職人とは違う文脈で世界に挑戦していけると考えています。」
ファッションの業界だけではなく、現在多くの業界で新しいものづくりのあり方が求められている。今までのものづくりのあり方をそのまま受け入れていくだけではなく、全体を俯瞰しながらものづくり全体を見直すこと、そして、AIなどテクノロジーも”仲間”として受け入れつつ、旅するように新たな出会いを楽しみながらアクションを起こし続けることが、新たなものづくりスタイルを生み出すのではないか?取材した3名が今回の旅の工程を楽しそうに振り返る話を聞きながらそのように感じた。『TYPE-IX Synflux project』は2025年1月にA-POC ABLE ISSEY MIYAKEの店頭に並ぶので是非店頭で見かけた際には、今回お届けしたストーリーも思い出しつつ、新たなものづくりの可能性を感じてほしい。