経済

2024.04.24

米政府、中国の銀行への制裁を検討 対ロシア貿易決済巡り

中国の習近平国家主席(左)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2023年10月18日撮影(Suo Takekuma-Pool/Getty Images)

米政府は、対ロシア貿易の決済を行う中国の銀行に対する制裁を検討している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが23日報じた。

制裁の背景には、中国とロシアの貿易に対する懸念がある。米政府は、中国がロシアの軍事力の回復を助け、ウクライナとの長い消耗戦に拍車を掛けているとみているのだ。ウクライナ侵攻開始以降、中国はロシアに武器を輸出していないが、半導体や電子回路、機械、工具といった民生用と軍事用の両面で利用可能な製品の輸出が、ロシアの軍需産業を下支えしてきたと米政府は考えている。

制裁の内容について、同紙の取材に匿名で応じた米政府筋は、対象となる銀行を国際金融システムから切り離すことを想定していると説明。ただし、問題解決に向けた外交努力が失敗した場合にのみ適用される「選択肢」だとしている。

制裁が適用された場合、対象となる金融機関は米ドルでの決済ができなくなる。そうなれば、国際貿易の決済に支障をきたすとともに、標的となった銀行は破綻の危機にさらされ、顧客も打撃を受けることになるため、その影響は計り知れないものとなる。制裁が発動されれば、新型コロナウイルスの流行以降、低迷を続ける中国経済の回復が遅れ、膨れ上がる債務にも悪影響が及ぶ可能性がある。

米国務省は、アントニー・ブリンケン長官が24日から中国の北京と上海を訪問し、中東危機やウクライナ侵攻、台湾や南シナ海を含む国際問題を幅広く協議すると発表した。同長官はロシアへの輸出を巡り、中国政府をけん制するものとみられる。だが、厳しい制裁をちらつかせることで、中国側にロシアとの貿易を思いとどまらせる効果があるかどうかは未知数だ。

米政府はここ数週間、中国の対ロシア輸出に懸念を表明してきた。先週イタリアで開催された主要7カ国(G7)外相会合の後、米外交筋は、ロシアの防衛産業を支える最大の力は中国だと名指しした。ブリンケン長官は、工作機械や半導体などの軍民両用品が中国から流入しているため、ロシアの軍需産業は制裁や貿易規制の影響を十分に受けていないと指摘。中国が欧州をはじめとする国々と良好な関係を築きたいのであれば、冷戦終結以来、欧州の安全保障上最大の脅威となっている問題を刺激するべきではないと警鐘を鳴らした。

また、今月上旬に北京を訪問したジャネット・イエレン米財務長官は、中国企業がロシアの軍事調達に関わっている実態に懸念を表明。ロシアの防衛産業に軍事品や軍民両用品を流すような重大な取引を手助けする銀行は、米国の制裁の対象となると警告していた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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