ロシアと中国の「脱米ドル」加速、BRICSにデジタル通貨導入へ

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ビットコインの価格は3月8日に史上最高値を更新し、7万ドルを突破した。これにより、イーサリアムやXRPなどを含む暗号資産市場全体の時価総額も上昇している。

そんな中、中国とロシアが手を組み、デジタル通貨とブロックチェーンに基づく独自の決済システムの構築に乗り出した。著名アナリストの1人は、この動きが米国の覇権に核兵器よりも重大な危機をもたらすと警告した。

ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官は3月5日のタス通信のインタビューで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国からなるBRICS(ブリックス)が「独立した決済システム」を構築することが将来の重要な目標だと語った。この決済システムは、デジタル技術やブロックチェーンといった最先端のツールに基づくものになるという。

「ここで重要なのは政府や国民、企業にとって便利で、費用対効果が高く、政治色のないシステムを構築することだ」とウシャコフ補佐官は述べている。

BRICS諸国はここ数年「脱米ドル」のための方法を模索してきたが、この流れは米国がウクライナに侵攻後のロシアに制裁を課して以降に加速した。

2022年にロシアは世界の主要な決済ネットワークであるSWIFT(スウィフト)から追放されたが、その際にロシアの中央銀行の元副議長のセルゲイ・アレクサシェンコは「この措置は、大惨事につながる」と述べていた。

南アフリカのアニル・スークラルBRICS大使は昨年「ドルが世界の中心だった時代は終わった。それが現実だ。私たちは今、多極的な世界貿易システムを持っている」と述べていた。

一方、中国もビットコインや暗号資産に触発された「デジタル版の人民元」を徐々に導入しており、国内の資金の流れを管理すると同時に、世界貿易で米ドルに対抗しようとしている。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の昨年10月の記事によると、中国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の取引件数は昨年7月までに9億5000万を突破し、6月末時点の累積発行額は1兆8000億元(約37兆円)と、2022年年8月の1000億元(約2兆円)から爆発的に増加したという。

ギリシャの元財務大臣でエコノミストのヤニス・バルファキスは先日、オーストラリア研究所で開催されたイベントで「資金の流れが今後ますます中国のデジタル決済システムに移行していくとしたら、米国の覇権にとって核兵器よりも危険なことになる」と発言した。「米中の冷戦が激化している原因は、ここにあると私は考えている」と彼は述べていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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