アジア

2024.04.24 08:00

中国の財政リスク、フィッチの格付け見通し引き下げで明白に

Osugi / Shutterstock.com

格付け会社フィッチは今月初め、中国の財政見通しに厳しい見方を示した。格付けは依然として高い「Aプラス」に据え置いたが、「見通し」については引き下げた。昨年12月のムーディーズの評価に追随した格好だ。

予想通り、中国財務省は失望を表明。中国の経済と金融は良好な状態にあり、改善する可能性が高いと主張してフィッチの判断に異議を唱えた。筆者はこの1年半〜2年ほど中国の深刻な経済・金融問題について取り上げており、読者にとってフィッチやムーディーズの判断は全く驚くべきことではないだろう。

フィッチの評価は、中国が直面する問題の多くを浮き彫りにした。特に注目すべきは不動産危機であり、かつて中国経済の柱だった不動産売買と開発が大きく低迷している点だ。不動産の価値が下落したことで家計の資産が目減りし、それに伴い個人消費も落ち込んでいる。

不動産危機に端を発した不況は、中国経済の成長ペースを鈍化させた。不動産開発企業の破綻により市場は多くの疑わしい負債を抱え込むことになり、回収の見通しは立っていない。そのため、将来の成長を支える借入と融資が抑制されており、影響は広範に及んでいる。フィッチはさらに、中国政府がこの重要な問題に対応するまでに何年もかかったことも指摘している。

ムーディーズと同様、格付け会社としてフィッチは財政の健全性を特に重視している。引っかかっているのは、地方政府に重くのしかかっている莫大な債務だ。地方政府は2021年に不動産部門の崩壊が始まる前から問題に直面していた。中国の一般的な慣行では、国のインフラ事業費用の大半を賄うために地方政府が「特別目的債」を発行する。このため、地方政府はすでにかなりの債務超過に直面していた。

こうした重荷を背負っていたところに、地方政府は不動産危機で主要な収入源を失い、債務返済は以前にも増して困難になっている。フィッチの試算によれば、地方政府は11兆ドル(約1700兆円)相当の債務を抱えているとみられる。この数字を検証する方法はないが、財政があまりにひっ迫しているために公共サービスを削減せざるを得なくなった地方自治体があることは注目に値する。

中国政府はようやく現実に対応し始めた。地方政府の負荷を少しでも軽くするため、直近のインフラ支出を国債の発行で賄うことを決定した。発行額は1兆ドル(約1390億円)規模となる見込みだ。政府は「超長期債」を活用する予定だと発表しており、この方針からは、政府が資金投入の早期回収を期待しておらず、財政の懸念から返済をできるだけ遅らせたいことがうかがえる。

状況からそうせざるを得ないようだ。中国の公式発表では2024年の財政赤字目標を国内総生産(GDP)比3%に設定しているが、フィッチは同7%強と見積もっている。さらに、中央政府の債務残高は昨年のGDP比56.1%から今年は61%超に増えそうだ。

どう見ても、ひどい状況だ。筆者が過去の記事で書いてきたように、特に不動産危機への中国政府のお粗末な対応や、米国、欧州、日本、そして発展途上国の多くの国々が中国との貿易を敬遠していることを考えると、この状況はすぐに改善されそうにない。実際、フィッチとムーディーズが中国の格付けそのものを引き下げず、見通しのみ引き下げたのは単に優しさから、あるいは政治的なものである可能性が高い。にもかかわらず、中国の問題は日を追うごとに誰の目にもはっきりしつつある。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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