2024.05.14 14:15

元ホテルマンが回想するトコジラミの恐怖と対策、ホテル側の苦悩


「本当に被害なんてあるの? ものすごく少ない特殊例じゃないの? 聞いたことないし……」なんて思う人もいるかもしれません。実はトコジラミのホテルの口コミによるイメージダウンによって客数が減ることを宿泊業は恐れますから、情報が宿側から積極的に公表されることは全くと言っていい程ありません。

しかし、けっして都市伝説ではありません。この恐ろしい吸血虫は実際に存在するのです。

この虫は隙間に隠れ潜みますから、スタッフが作業中に偶然に見つけるということがなかなか出来ません。不本意ながらお客様の被害の訴えやクレームによって初めて分かることになります。

夜行性で部屋が明るいと出てきません。就寝中に刺されるとしてもこんな大きな虫なら気付くでしょう?と思うかもしれませんが、そうはならず何ヶ所も吸血されてしまいます。

ベッド・布団が、シーツがかゆいというのは洗濯時の洗剤・薬品に敏感な場合や気のせいということもありますが、刺し傷や咬まれ痕があって赤く腫れているという場合は、蚊かダニかトコジラミでしょう。

「糞」を捜す

ただ、噛み跡・噛まれ跡だけで断定するのは難しいです。

もっともお客様はダニによるものと思ってクレームを入れる方がほとんどなわけですが、たとえダニ刺されであったとしてもとても申し訳ないことです。

単なる虫刺されと思って、「虫刺され ホテル」と検索して、今びっくりしている人もいるかもしれません。

そして、いるかもしれない部屋は徹底的にチェックをすることになるわけですが、前述したように隙間の奥底に隠れているのをスタッフが見付けることは困難です。ではどうするかというと実は糞を捜します。南京虫は活動中に見える場所に糞(血糞)をすることがあります。細い黒マジックで先をチョンチョンと打ったような跡なのですが、だからと言って、慎重に見ていかないと見落としかねないとても小さな跡です。

何回か経験があってフンを見たことがあると容易に分かるのですが、初めてだと他の虫のものか、汚れなのかの判断は難しいかもしれません。

「むしむし探偵団トコジラミ用判定キット」といった判定マットが販売されていますが、1万円以上します。

糞は見つけられない、姿も見つからないのだけれど、絶対にいる──という場合は、比較的安価なもので「トコジラミ ベッドバグスライダー」という捕獲器もあります。ただこれは、この装置をトラップとして、根絶することを目的とするのではなく、あくまでも「棲息を確認するため」のものですから、注意して下さい。
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「ホテル裏話 | なぜ? みんなの疑問を元ホテルマンが暴露」 編集=石井節子

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