米国へのFDIの大部分(全体の40%以上)は製造業に集中している。米国の全製造業企業のうち関連会社は約3.1%だが、米製造業の労働者の22%を雇用し、製造業GDPの21%、輸出の17%を占め、製造業全体の収益の3分の1以上を生み出している。
2020年までの20年間で、米製造業の雇用が370万人(22.3%)減少したのに対し、関連企業では50万人(21.7%)以上増えた。この間、米国の実質製造業GDPは38%増加したが、関連会社では111.6%増と2倍以上になった。製造業全体で34%増加した売上高は、関連会社では125.6%増だった。関連会社の報酬支出は59%増加したが、米国の製造業全体では11%増にとどまった。
製造業の関連会社はまた、米国での事業に力を入れている。概して、関連会社の有形固定資産への年間投資額は米国の製造業平均の約2倍のペースで増加している。それにともない、関連会社の資本合計は2001〜2019年に122%増加し、製造業全体(55%)の2倍以上の速さで成長した。米国の製造業の資本に占める関連会社の割合は2001年に26%だったのが、2019年には37%になった。
米国で自動車を生産するのは国内企業だけだったのは、それほど昔のことではない。その当時、米国の自動車メーカーは競争にほとんどさらされていなかったことから、新しい技術や設計に十分な投資をせず、消費者が何を求めているかにほとんど注意を払わなかった。そのため、低品質でかなりのメンテナンスを要する、魅力に欠ける車を大量に生産していた。
日本、次いでドイツ、それから韓国の自動車メーカーの関連会社がもたらした投資と競争が既存の米国内メーカーに製品の品質向上を促し、後に続いた技術共有が米国内メーカーと消費者の双方に利益をもたらしたことに疑いの余地はない。FDIは、あぐらをかいていた米産業の再活性化に貢献した。
米国に進出している日本メーカーの中にはトヨタやホンダ、住友、日立、三菱など、業界のリーダーとして知られる企業が数多くある。FDIの流入と、これらのメーカーを含む日本企業の関連会社の米国における事業展開がなければ、米国の製造業はとっくに二流に成り下がっていただろう。
大統領選がある年特有の米政府の意向とは裏腹に、貿易とグローバリゼーションは米国の製造業を弱体化させたのではなく、救ったのだ。
(forbes.com 原文)