北米

2024.04.15

米国の製造業を救う海外直接投資、特に日本からの

Andrew Leyden / Shutterstock.com

世界で米国ほど海外直接投資(FDI)を誘致している国はない。そして日本ほど自国企業が米国に投資している国もない。この事実は、バイデン米大統領が岸田文雄首相と祝杯をあげる理由となるはずだ。だが、バイデン大統領は日本製鉄のUSスチール買収案に反対しているため、二国間の投資についての議論はやや気まずいものになっている。

この記事では、バイデン大統領が取る立場がなぜ経済や米日関係、米国のソフトパワー、そしてバイデン政権の友好国に機能を移す「フレンドショアアリング」。全体にとって良くないのかを繰り返すのではなく、おそらく公式記録には残らないだろうが、米日の投資関係の良い点をいくつか挙げる。まずは統計を見よう。

米国の対内直接投資残高(2022年末時点)は5兆2500億ドル(約800兆円)だ。日本からの投資は国別では最大で7750億ドル(約120兆円)。全残高の14.8%を占める。

主な投資分野は製造業で、2兆2300億ドル(約340兆円)と米国へのFDI全体の42.4%におよぶ。その中で投資額が最も大きい国は日本で全体の16.6%、額にして3700億ドル(約56兆円)だ。

製造業の中では輸送機器産業が最も多くの投資を呼び込んでいる。1980億ドル(約30兆円)と製造業全体の8.9%だ。日本自動車工業会(JAMA)によると、2023年の日本の自動車メーカーの対米投資は616億ドル(約9兆円)と、この分野における対米投資の約3分の1にあたる。

では、こうした米国の対内直接投資は何を意味するのか。なぜ良いのだろうか。

まず、投資は経済活動を促進する。外国企業は長い間、米経済に重要な貢献をしてきた。JAMAによると、日本の自動車メーカーは昨年、米国の工場で自動車を320万台、エンジンを390万個生産した。また、米国の工場から自動車を16万7000台を輸出し、米国で11万人を雇用している。実際、外国企業が「大半を出資する」米国の関連会社(以下「関連会社」とする)は、不釣り合いなほどに米経済に貢献している。

FDIが米経済にもたらす利益は、さまざまな業績評価指標において絶対的にも相対的にも極めて大きい。特に製造業において顕著だ。実際、2022年の分析では、外国企業の進出がなければ、米国の製造業GDPの規模は2019年より8.4~20.9%(1770億~4630億ドル)小さかったとみている。

全体として、関連会社は米国の全企業の1.8%にすぎないが、雇用や報酬、収益、付加価値、輸出、研究開発の支出、設備投資を考えれば存在感はそれ以上だ。

例えば、2001〜2019年に米国の民間部門の雇用は16%増加したが、関連会社の雇用は38%増えた。また、民間部門の実質付加価値は47%増だったが、関連会社の増加幅はおおよそ2倍の87%。また民間部門の有形固定資産(PPE)の価値は53%増加したが、関連会社では2倍以上に増えた。関連会社は米国の平均を上回る業績を上げるだけでなく、そうすることで数学の法則によって、また自国の会社の業績を向上させることによって、米国の経済を引き上げている。
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翻訳=溝口慈子

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