アジア

2024.04.05 09:00

知中派の大物投資家、レイ・ダリオが恐れる中国の「100年に1度の大嵐」

また、中国のアリババ集団の華々しいニューヨーク上場に触発され、中国のテクノロジー部門に大きく賭けていた投資家にとって、習はかなり気の滅入る存在になっている。2020年後半のアリババ共同創業者ジャック・マーに対する処置をはじめ、中国共産党による取り締まりは、中国の大富豪の実業家たちに、本当に報告すべき相手は誰なのかを思い起こさせた。その相手は株主ではなかった。

中国のこうした状況、さらにはデフレの到来も踏まえて、ダリオは中国経済の将来を日本経済の過去と重ね合わせて見るようになっている。もちろん、そうしているのは彼に限らない。中国の不動産危機がもたらす衝撃は、日本がいまもなお払拭しきれていない不良債権問題と響き合う。

たしかに、日経平均株価は史上最高値を更新するなど絶好調だ。しかし日本経済は足踏み状態が続き、急速に進む人口高齢化や先進国で最大の公的債務といった問題も山積している。日本銀行が25年におよぶゼロ金利からの脱却に苦慮してきたことを指摘するだけでいいだろう。日銀は3月、ようやく利上げプロセスに着手したが、世界の投資家からは嘲笑され、その後も円安が進んでいる。

日本の失われた数十年の背景に「バランスシート不況」(企業や家計が債務の返済を急いで投資や消費を抑える現象)があったように、ダリオやその一派が心配しているのも中国の債務の推移だ。ダリオは、中国はデレバレッジ(過剰債務の圧縮)を加速させると同時に、1990年代前半の日本よりも早い段階で利下げを行うべきだと主張する。

「私見では、これ(デレバレッジと利下げ)は2年前に行われるべきだった。もし行わなければ、おそらく、失われた10年につながってしまうだろう」(ダリオ)

ダリオは、中国は本来はもっと広範な発展ニーズにリソースや関心、エネルギーを注ぐべきなのに、過剰な信用のためにそれがおろそかになっていると懸念する。「負債が返済できないほど大きくなり、貧富の格差も広がると、(信用創造から購買力、繁栄へとつながる資本主義の)サイクルは逆回転し始める」と警告する。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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