アリババが物流部門のIPOを中止、AIスタートアップへの投資を加速

ジョセフ・ツァイ(Michael Kovac/Getty Images)

中国のアリババグループは、昨年3月に発表した事業再編計画をさらに後退させ、物流部門のツァイニャオ(菜鳥)の新規株式公開(IPO)を中止した。

同社は3月26日の提出書類で、少なくとも10億ドルを調達すると広く報じられていたツァイニャオの香港でのIPO計画を撤回した。アリババのジョセフ・ツァイ(蔡崇信)会長は、IPO市場の厳しい状況や、海外進出にともなうさらなるインフラ投資の必要性などを撤回の理由に挙げた。

同社は今からちょうど1年前に、クラウドコンピューティングやローカルサービス、物流を含む6つの小さなユニットに会社を分割する大規模な再編計画を発表した。アリババは当時、各ユニットが独立した資金調達やIPOを追求すると述べて投資家を興奮させていた。

しかし、この計画はうまく進んでいない。クラウド部門のIPOは、売上高が伸び悩んだためすでに中止されている。食品スーパチェーン盒馬鮮生(フレッシッポ)のリーダーシップも、売却計画の噂の中で揺らいでいる。また、アリババはツァイニャオのIPO申請を取り下げる一方で、同社の評価額を103億ドルと見積もる取引で、従業員や外部投資家から株を買い戻すことを提案している。

この価格は、以前は200億ドルとされていた評価額から50%近い下落を意味しており、ツァイニャオが多くの問題に直面していることに起因しているとアナリストは指摘する。同部門の2023年の最後の四半期の売上高は24%増の40億ドルで、成長率は同期間のアリババ全体の売上高の5%増を大きく上回ったが、投資家は親会社との関係や外部顧客をどのように引き付けられるかを懸念していると、香港の調査会社ブルー・ロータス・キャピタル・アドバイザーズの創業者エリック・ウェンは指摘した。加えて、中国国内の物流市場は景気の低迷に直面しており、アリババのeコーマス事業は、Shein(シーイン)やTemu(ティームー)などとの厳しい競争に直面している。

シンガポールを拠点とするDZT Researchのキ・ヤンは「アリババの経営陣は過去の市場状況を楽観視しすぎていたのかもしれない。業界全体が減速する中、以前の評価は間違いなくもう使えない」と述べている。

AIへの注力

その一方でアリババは、生成AIのような新たな領域に目を向けている。同社の共同創業者のジャック・マーが昨年末に変化を求めた後、アリババはストリーミングプラットフォームのビリビリ(嗶哩嗶哩)と電気自動車(EV)メーカーのXpeng(シャオペン)の数億ドル相当の株式を売却した。

同社は現在、AIスタートアップへの投資に注力しており、今月初めにAI大手センスタイム(商湯科技)の元幹部によって2021年に設立されMiniMax(ミニマックス)の6億ドルの資金調達ラウンドのリードインベスターとなり、2月にはChatGPTのようなサービス「Kimi」を開発した創業1年のAI企業Moonshot AI(ムーンショットAI)の10億ドルの資金調達ラウンドをリードした。

昨年末にeコマース事業の中核を担うCEOに就任したエディー・ウー(呉泳銘)は、商品のレコメンデーションを刷新したり、加盟店が買い物客と対話する革新的な方法などの領域におけるAIの可能性を繰り返し強調している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事